理由のない場所

  • 河出書房新社 (2020年5月19日発売)
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感想 : 34

自死した息子との架空の対話。言葉を話題にしたりして、知的な会話とも言えるのだけど、余り馴染みのない感じなので、ちょっと入りにくかった。
後書きを読んで、実際に著者に起こったことを元にして書かれている事、さらに、著者が二度自殺未遂していることも知りショックを受けた。
最初は中国にいた頃。二度目は自死した長男が小学生くらいの頃だと思われる。
二度目はウツ病の薬を飲み忘れた事が直接の原因だという話だった。
知人に子供に愛情があるなら死んではいけないと言われ、愛情と自殺未遂は関係がないと思ったという。
しかし、酷な話だが、やはり関係はあるし、長男の自死とも無関係ではないと思う。
母親が自殺しようとしていたという事実。
きっと自分は捨てられたと思った事だろう。
このような恐ろしい思いをもう一度するくらいなら、先にいなくなった方がいいと思ったのではないか。
この世は生きるに値しないというメッセージを受け取ってしまったのではないだろうか、、、。

人間は突き詰めれば、しなければいけない事は意外とないかもしれない。
でも、一つだけあるとしたら、寿命まで生き切ることだと思う。たとえどのような状態であっても。

著者の作品はいつも深い余韻を残す。
これも例外ではない。なぜか分からないが、一つ残らず読みたいと思う。 

後記
その後著者の置かれている立場についてよく考えてみた。恐らくかの国からの監視は避けられないのではないか。そう思いついた時、とてもとても怖くなった。
どうか生き延びてほしい。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2020年12月1日
読了日 : 2020年12月1日
本棚登録日 : 2020年8月5日

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