カタロニア讃歌 (ちくま学芸文庫 オ 11-2)

  • 筑摩書房 (2002年12月1日発売)
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感想 : 6
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『Hommage to Catalonia』の訳本は複数社から出版されているが、一部が省かれた版も多数存在するので、原語の内容を溢さず読みたい人には、本書をお勧めする。

未だかつて、こんなにじっくりたっぷり読み込んだ本は無い…。大学のゼミで取り上げる題材だったから、という理由なのだけれど、そもそもは原語で読んでいて、途中あまりに複雑で心折れそうになり、論文書くうえでは母語で読まないことには先に進めず、何度も読み返しては線を引いて付箋貼っての繰り返し。

オーウェルの生い立ちや思想とか理想というものは彼の著作を読むほどによく理解出来ると思うが、この作品は、ある意味、彼の人生のクライマックスのようなものではないかと思う。
イギリスの「上層中流階級の下の方」に生まれた著者がどのような青少年期を過ごし、やがてスペイン内戦に従軍記者として赴くことになったのは何故か。そこで彼は何を見たのか。従軍記者として赴いたハズが、自身が銃を握ることとなったのは何故か。
理想と現実の間でオーウェルが感じたことは何だったか。その後彼の心はどこへ向かっていったか。

ルポルタージュと言っても決して堅苦しくなく読み易い方だと思う。世界が第二次大戦へと向かっていく直前の激動の時代、欧州で何が起きていたのか、その一端を内部から知ることが出来る貴重な書。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: ルポルタージュ
感想投稿日 : 2020年8月8日
読了日 : 2004年12月3日
本棚登録日 : 2020年7月19日

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