ものすごくうるさくて、ありえないほど近い

  • NHK出版 (2011年7月26日発売)
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本棚登録 : 1421
感想 : 171
5

凄い小説だった。主人公の少年が撮影した写真や、もはやデザインにも近しい手紙風の挿話が含まれていたり、読むことが正しく映画的で体験ともいえるような本だった。

911で父親を亡くした少年、ドレスデンの爆撃で恋人を失い、言葉の発し方も失ったその祖父、祖父の恋人の妹であり、祖父に去られてしまう祖母の三者の話。それぞれ文体は違うが、全てが失った大切な物を軸に語られる。心が痛すぎて、何度か読み進めることが出来なくなってしまった。

主人公の利発な少年がユーモアの効いた軽い語り口で物語を展開させるが、ふとした独白や、別の人の視点になった時、よく泣いていることが分かる。その見せ方もすごい。
さらには言葉の発し方を失った祖父と、その祖母が離別するシーンの映画的な書き方。ジェスチャーで伝えなければならないがゆえに、その痛ましい情景が浮かんでくる。

もちろん、最終的には三者それぞれ再生する。911の悲劇と真正面から向かいあい、それを乗り越えようとした、それだけのパワーのある小説だった。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2012年9月8日
読了日 : 2012年9月8日
本棚登録日 : 2012年9月8日

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