日本二千六百年史 新書版

著者 :
  • 毎日ワンズ (2017年9月26日発売)
3.38
  • (3)
  • (12)
  • (6)
  • (2)
  • (3)
本棚登録 : 201
感想 : 13
4

初代天皇神武天皇が、即位されたとするBC660年を起点とする日本史として皇紀2600年となっています。
いわゆる、インペリアルカレンダーを使っています。

大川周明は、数カ国の言語を習得し、イスラム教にも明るい。
当初は、エリート集団、満鉄調査部に所属し、拓大の教壇にも立っていた。キリスト教、西洋哲学から始まり、イスラム教を経て、国家社会主義にたどり着いた。
皇道派として、2つのクーデターの論理武装を構築し、満州帝国の建国に尽力した。
東京裁判を生き抜き、1957年神奈川県の自宅で一生を終えた。

本書は、300頁におよぶが、日本史のエッセンスをつめこんだものとして、納得感がありました。

気になったのは以下です。

・中国で政権交代が行われると、シナ人は故国を捨てて、日本に帰化するものが多かった。そして彼らは日本では文明人として丁重に迎え入れた。
・もともと日本には、天象に関する迷信はなかった。
・日本史は、四期に画することができる
 建国より大化の改新まで
 大化の改新より、鎌倉幕府成立まで
 鎌倉幕府成立から徳川幕府の大政奉還まで
 明治維新から現代まで
・神功皇后の折、儒教、仏教が伝来した。当時の我が国が東海の一孤島でありながら、その精神的方面において、すでシナ及びインドと雁行しえるだけの素養を築き上げていた
・聖徳太子は、氏姓制度をこのままに放置すれば、いわゆる天を覆さんとする民の出づべきことを明確に洞察し、仏教の信仰と、儒教の道徳を経緯として、シナの制度にのっとって新しい国家を実現しようとした。
・仏教の伝道者が優等なる文明の持ち主でもあった、寺工、仏工らの建築技術、紙と墨、天文・地理、暦本、農業技術、医術、砂糖などが仏教とともにもたらされた
・仏教の教えが、万物皆空、諸行無常を力説したにもかかわらず、実際には、著しい象徴主義の宗教であった。仏像、仏画、堂塔などきわめて仏陀の福音を慈悲・偉大・荘厳を形象化することに努めていた。

・奈良朝の偉大なる作品とは、塑像、乾漆像、木像、銅像などの彫刻である
・奈良朝では、実に仏教が疲弊の禍根となった
・天皇は二人の偉大な宗教家をして腐敗せる奈良朝仏教の改革にあたらせた。弘法大師、伝教大師である
・古の日本では、西南をもって故国となし、東北をもって植民地とみなしていた
・平安朝における荘園制度の発達は、国家の政治的統一を破壊し去れるが故に、地方の豪族=武士は、激烈にして露骨なる生存競争をはじめ、ついには中央政府を脅威するの大乱を生ずるに至った
・平将門の乱、安和の変、平忠常の乱、安倍頼時の乱、清原武衡の乱など、源氏をして東国のさむらいごごろを得せしむる因縁となった

・鎌倉幕府の創立は、やむなき必要に迫られたる政治的改革であった。中央集権制度の実現は水泡に帰し、国民の政治的統一は全く失われて、ほとんど無政府状態に陥ったのである
・しかして、この政治的退廃より救ったのは実に源頼朝の功業に帰せざるを得ない
・武人の道徳的向上は独り男子のみならず、婦人の道徳もまた鎌倉時代に入って俄然として向上した。武士道が頼朝に負えるように、婦人道はその妻政子に負うところが大きい
・加持祈祷の仏教から、国民個人を救済する鎌倉仏教が台頭した。始めたのは、日本版ルーターともいえる、源信僧都、法然、親鸞であった。禅宗が続き、法華宗がその最後を締めくくった。
・新宗教とは次のような特徴をもつ。
 新宗教の宣伝者が、皆、伝道に熱心なこと
 宗教を外面的儀式の束縛から解放したこと
 学問より開放して、その教義信仰の単純簡明であること
・仏教には正像末の三時説というのがある
 釈迦入滅後500年 正法の世
 次の1000年 像法の世
 その次の10000年 末法の世
・万民安堵、質実簡素を家法とする北条氏の精神は、時宗の元寇撃退を最後としてあわただしく、当初の剛健真摯を失い始めた。
・建武中興は、しかして、足利尊氏は新政に不満であった武士の統領として、ついに後醍醐天皇に反旗を翻し、足利党が勝利した。
・後醍醐天皇があまくみたのは、北条氏がほろぶも、大小名の勢力は依然として亡びない、政府を作り、これを倒す実力は実に大小名の手にあったことだ。
・応仁の乱以降の戦争は騎馬時代より歩兵時代に移った。
・大名間の競争が激しくなるにしたがって、兵力を城下に集中しておく必要が次第に大となった。
・戦国時代は、下剋上の時代。実力本位の時代である。

・学問と言えば、貴族と僧侶の特権であったが、戦国時代において武人の好学に及んだ。
・江戸時代に盛んとなった学問は以下
 中江藤樹、熊沢蕃山ら、王陽明学
 伊藤仁斎ら 儒教古学
 新井白石
 契沖、賀茂真淵、本居宣長ら、国学
 そして、青木昆陽ら蘭学
・八代吉宗は、農業の精緻なる目的で、西洋の詳細な暦を手に入れようとして、洋書の禁を緩めた
・前野良沢、杉田玄白は、ターネルアナトミアの人体の、寸分も実物と相違せざるを見て驚愕し、非常なる発奮のもとに、解体新書を表した
・諸藩の重役が算術を知らざるがゆえに、天下の富が多く商人の手にするは、極めて当然であった
・諸侯の窮乏すでにかくの如くなれば、藩士の困窮せることは言うまでもなかった

・明治維新の建設的事業は、明治天皇の親政府の手によりて断行せられた。それ一切の改造は、常に強大なる中央権力を要し、従って断固たる専制政治を欲する。
・明治維新は、2年の版籍奉還、廃藩置県、国民皆兵、徴兵令の発布、地租改正、義務教育の開始である
・明治維新は、
 ペリー来寇から大政奉還までの15年を前期、大政奉還より、国会開設の詔示までの15年を本期、国会開設までの10年を後期として40年にわたる苦心経営の結果として成る

目次


第1章 序論
第2章 日本民族及び日本国家
第3章 日本国家の建設
第4章 儒教及びシナ文明の伝来
第5章 大化改新
第6章 仏教は如何にして日本に栄えしか
第7章 奈良朝の文化
第8章 平安遷都
第9章 貴族政治の堕落と武士勢力の台頭
第10章 源氏と平氏
第11章 鎌倉幕府の政治
第12章 鎌倉時代の日本精神
第13章 宗教改革者としての道元禅師
第14章 蒙古襲来前後
第15章 建部中興
第16章 室町時代
第17章 戦国時代の文明史的意義
第18章 新時代の開拓者織田信長
第19章 海外発展精神の勃興とその挫折
第20章 基督教の伝来
第21章 切支丹禁制
第22章 徳川時代の社会及び国家
第23章 徳川初期の文化
第24章 徳川時代の思想界に於ける新精神
第25章 徳川時代に於ける泰西文明の摂取
第26章 幕末日本の国難
第27章 崩壊すべかりし封建制度
第28章 尊皇と攘夷と倒幕
第29章 第明治維新
第30章 第世界維新に直面する日本

出版社 每日ワンズ, 2017
ISBN 4901622951, 9784901622950
ページ数 293 ページ
第1刷発行 2017年10月01日
第2刷発行 2017年10月22日

読書状況:いま読んでる 公開設定:公開
カテゴリ: 歴史
感想投稿日 : 2023年9月6日
本棚登録日 : 2023年9月2日

みんなの感想をみる

コメント 0件

ツイートする