建築探偵桜井京介の事件簿短編集。
番外編とはいえ、内容は本編にも絡んでくる。
シリーズを読み始めてまもない頃に接したため、「捩れた塔の冒険」で漸く作品世界の奥深さに触れられた気がした。
謎解きの出来や推理の明晰さなどを指すのでなく。
子供という存在に秘められた、(大人の観点とは異なる)悪意や桎梏が抉り出される過程の、堪らぬリアルさ・切実さ。
京介が為すのは、警察など外部への協力や当人の業績としての推理ではなく、生身の人間に渦巻く感情や感覚の歪みや澱みを、簡潔に必要な分に限り、言葉にしているだけの作業なのではないかと思った。
その意味で「オフィーリア、翔んだ」に出てきた『探究者』の語が、彼には最も似つかわしい。
探偵よりも、研究者よりも。
ラスト(「桜闇」)を見、素直に「原罪の庭」が読みたくなる。
彼と蒼の出逢い、深い愛情の誕生を、色眼鏡でなく知りたいと。
読書状況:読み終わった
公開設定:公開
カテゴリ:
小説(ミステリ・サスペンス)
- 感想投稿日 : 2011年3月27日
- 読了日 : -
- 本棚登録日 : 2011年3月20日
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