幕末から明治にかけて活動し、坂本龍馬や高杉晋作らの肖像写真を撮影した、日本写真界の草分け的存在である職業写真師・上野彦馬を主人公とする、時代ミステリー小説。
彦馬の弟子・富重利平や元勲の他、シーボルトの娘で女医の楠本イネや、その娘の高子など、実在の人物たちが数多く登場し、史実に基づいたフィクションが展開する。
未だキナ臭さの燻る新都市・東京を舞台に、長崎から警視庁に招聘された彦馬が、日本初期のプロカメラマンとして、化学知識と写真技術を駆使し、事件の謎に迫るという趣向が斬新。
文明開化の新時代で、科学捜査の嚆矢となる写真師たちの先進性が取り上げられる一方、江戸から東京へと移り変わっても、人心までは急激には変わらない実状や屈折した心情も並行して描かれる。
新政府内での権力争い、藩閥政治の根っこにある確執など、いつの世も変わらぬ人間同士のしがらみを残したまま、シリーズ化が待たれる。
読書状況:読み終わった
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カテゴリ:
小説(ミステリ・サスペンス)
- 感想投稿日 : 2024年3月18日
- 読了日 : -
- 本棚登録日 : 2024年3月18日
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