郊外のパン屋を舞台に繰り広げられる、教育に纏わるハートウォーミングストーリー。
元小学校の男性教員が職を辞して、実家のベーカリーを継ぎ、父と息子の三代で暮らしながら修業しつつ、町の人々と関わり、無料の学習塾を開いて子供たちを支えてゆく。
教師の役割、親の役割、そして、子供の成長と、学ぶことの意義が問われる。
勉強に悩む子供の姿を等身大で描きつつ、各家庭にも事情があり、葛藤があることを丁寧に追っており、誰かしらに共感しやすい構図になっている。
やがて、多忙な教員時代の袋小路の想いと信念が、主人公の試行錯誤を通して、或る一つの理想像として結実する。
思うに、学ぶとは、手段を知るための道筋なのではないか。
大人になる過程で、働いていく上で、壁や困難に遭うのは、ほぼ必然。
そんな時、ただ諦めたり、失ったり、追い込まれてしまう前に、何とか足掻き、考慮し、工夫し、這い上がり、道を切り拓いていくための「思考の充填」こそ、学習の意義ではないかと考える。
勉強は、手段であって、目的ではない。
人生を豊かに、個々の思いや夢を実らせていくための、「心の武器」になりうるものだと思う。
学べる環境を整え、学びを手助けする先達が導き、そうして、人間社会は発達してきたのだから。
読書状況:読み終わった
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カテゴリ:
小説(他)
- 感想投稿日 : 2024年3月18日
- 読了日 : -
- 本棚登録日 : 2024年3月18日
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