貧困の戦後史 (筑摩選書)

著者 :
  • 筑摩書房 (2017年12月13日発売)
3.71
  • (4)
  • (5)
  • (7)
  • (1)
  • (0)
本棚登録 : 174
感想 : 12
5

副題にあるとおり、戦後日本の社会において貧困の「かたち」はどう変わったのかを綿密な実証分析とともにたどる好著。

著者は1947年生まれでまさに戦後日本とともに生きてきた学者ならではの視点が充溢している。これは決して本書が著者の主観に左右されているということではない。叙述は客観的かつ冷静で要所が押さえられていると感じたが、そのバックグラウンドには「実感」が感じられるということである。

レビューの分類では社会史に入れておいたのだが、もちろん、貧困の問題は経済史の問題でもあり、著者も最後に述べるように核心は、政治の問題である。

「自立」支援という貧困対策は、貧困の原因を個人の怠惰に帰する古典的な理解に基づいている。しかし、問題は過度に「自立」的であろうとしすぎることにあり、それを促す社会にあるという指摘は、非常に重要であると思う。

個人的には第3章以降、実感を伴いつつ引き込まれて一挙に読めた。逆に言うと敗戦直後の貧困の「かたち」をイメージするのはなかなか難しかった。若い人は後半から読み始めるのもアリだと思う。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 社会史
感想投稿日 : 2020年9月19日
読了日 : 2020年9月18日
本棚登録日 : 2020年5月26日

みんなの感想をみる

コメント 0件

ツイートする