伝説の森 上 (創元推理文庫 F ラ 3-10 ヴァルデマールの風 第 3部)

  • 東京創元社 (2007年10月1日発売)
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本棚登録 : 105
感想 : 9
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刊行から5年も放置してしまい、その間に徳間から出ている「女王の矢」のシリーズと魔法使者ヴァニエルのシリーズを読み終わってしまったので、ある意味、最もスムーズに歴史の流れが理解できたのではないかという不思議(笑)。一番最初に刊行されたタルマとケスリーのシリーズで結ばれたレスウェランとヴァルデマールの絆、最後の魔法使者ヴァニエルが魔法使者が消え去った後のことを考えて作り上げた仕組み、そして女王補佐タリアのシリーズで描かれた王女エルスペスの改心と成長という伏線が、ここで綺麗に回収されたので非常に読みでがあった。
まー、でも、ここまで来ると一言言いたい。作者が女性だからなのか、主人公が女性ばかりだからなのか、恋する女性は凛として強い(むしろ、けっこう厳しく怖い)姿で描かれるのに、その主人公たる女性に恋する男性は何でいつもステロタイプでダメ男に描かれてしまうのか……。
『運命の剣』のケロウィンに対するダレン王子、『女王の矢シリーズ』のタリアに対するダーク、そして今回はエルスペスに恋をしたと思い込んだスキッフ……。主人公に心惹かれる気持ちはわかるけど、恋したと思い込んだとたんに言動がトンチンカンになり、なぜか一様に相手を一般的な「女性」の枠に押し込めたがる。ダレン、ダークと続いた時は「まあ、そういうのもありか」と思ったけど、スキッフまでが右に倣えな行動を取るに至っては「恋するがゆえにバカをやる男」の描き方がワンパターンなんじゃないかと思えてしまいます。
それだけに、暗き風が何とかいろいろ(ギリギリではあるけど)踏みとどまって、エルスペスと「おあいこ」みたいだった展開は一捻りあってほっとしました。
ストーリーや世界観だけで十分おいしいシリーズなのだから、主人公の恋愛の紆余曲折ぐらいはバリエーションに乏しくてもしょうがないのかも、と頭の隅で分かってはいるんですけど。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 洋物ファンタジー
感想投稿日 : 2012年6月2日
読了日 : 2012年5月25日
本棚登録日 : 2010年1月14日

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