筆者のこれまでの著書や功績は十分知り得ていない立場ではあるが、本著はまるで新聞の連載コラムを読んでいるような、"新書"として纏める必要があったのか非常に疑問が残る一作だったと思う。
・ 終始、抽象論が過ぎる。
知の体力の説明のひとつに、下記を記していたが、これらは本作中にも幾度となく引用される。著者が所属する大学機関からの視点が主であり、今の教育制度に対する批評にしか聞こえなかった。
「学ぼうとする知識を役に立つか立たないかという軸でのみ見ようとすると、あらかじめ想定した場面においてしか、その知識は威力を発揮しないものである。大切なことは、何か現実世界で問題が起きたときに、自分が持っている知識、情報の総体を動員して、その場面にどうしたら対処できるのか」
・ 著者なりの解が全くない。
上記と重複するが、大学機関が社会に求められていることが、著者の思うところとズレていることに言及したり、質問が少ない学生を例にあげ、探求心が足りないのであると言う。本作は一貫して、このような著者の愚痴に付き合わされているような構成・論調であり、著作として出版されるほどのものかと思う。
「知の体力」というそもそもが抽象的なタイトルではあったが、先日ある方が本作を紹介されていたため、購入に至った。これほどまでに本のタイトルと内容がかけ離れているものがあろうか。編集者ももう少し考えようがあっただろうと、ツッコまずにはいられない本だった。
読書状況:読み終わった
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カテゴリ:
ノンフィクション
- 感想投稿日 : 2022年2月2日
- 読了日 : 2022年2月2日
- 本棚登録日 : 2022年2月1日
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