辻野晃一郎『グーグルで必要なことは、みんなソニーが教えてくれた』(新潮文庫、2013年)は、新卒でソニーに入社し22年間勤務したのち、グーグルの日本法人社長を勤めた著者のサラリーマン人生をエピソード風に回顧したものである。VAIO成功ののち、コクーンやスゴ録などの新規事業に取り組む著者は、経営戦略の迷走に翻弄されてしまう。統制が効かなくなった同社に見切りをつけ、グーグルに就職する。そこで著者は、かつてソニーに存在した自由闊達な精神を、グーグルの中で再発見する。
グーグルの仕事の仕方について、目新しい話は出てこない。むしろソニー時代の奮闘のほうが参考になる。とはいえ肩肘張って読むようなものではなく、新幹線の移動中などに気楽に読める本だ。1つ憶えておこうとになった比喩に、クラウドでのストレージの話があった。「グーグルの場合は、イメージで言うと、預かったデータは最初にまずシュレッダーにかける。そして裁断されたピースのデータを世界中にあるデータセンターのサーバーにばら捲き、分散、多重化して保存する」(p.273)。安心な印象を与えるためにシュレッダーを持ち出す点がうまい。
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- 感想投稿日 : 2013年4月29日
- 読了日 : 2013年4月28日
- 本棚登録日 : 2013年4月29日
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