田舎教師 (岩波文庫 緑 21-2)

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感想 : 9
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大学進学の夢破れ、田舎教師になりつつも、現実を受け入れつつ「置かれた場所で咲きなさい」の精神の下、教師という職業に充実感を見出していた矢先の病魔という悲劇。北関東の利根川領域の美しい描写とともに主人公の心境の変化が描かれている。
少しネタバレを含んでしまうが、もしこれが遊女との遊びで終わってしまったならば坂口安吾の堕落論的なデカダン作品、結核にならずに教師という職業に充実を見出し、自身の天職を見つけたるに至れりという結末であれば喜劇に終わったであろう。これは、堕落の危機からも立ち直り目の前の幸せをつかもうとしたにもかかわらず無念を抱えながら死んでいった若者の悲劇である。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 古典等
感想投稿日 : 2022年3月22日
読了日 : 2022年3月21日
本棚登録日 : 2022年3月22日

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