世界史とつなげて学べ 超日本史 日本人を覚醒させる教科書が教えない歴史

著者 :
  • KADOKAWA (2018年2月16日発売)
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感想 : 59

茂木誠さんは予備校で大人気の世界史講師。
この本は世界史目線で日本史を俯瞰するというもの。
そういう意味でも面白かったし、説明がとてもわかりやすいです。
たとえば土佐守(高知県知事)とか鎮守府(植民地総督府)とか大輪田泊(神戸港)とか。
学校の教科書では、そういうところで嫌になってしまったような気がします。

ただ、実は最初の三分の一ぐらいまでは、あまり面白くなかったです。
だから、そこで読むのをやめないで!

個人的には大航海時代にとても興味あるので、つぎのところがひっかかりました。

・ポルトガル商人と結ぶキリシタン大名が、日本人奴隷を輸出していたこと。
・イエズス会が、スペイン国王に日本派兵を要請していたこと
こうした事実が日本史教科書では軽視、あるいは無視されてきたのはどうしてでしょうか。
日本におけるキリシタン研究をリードしてきたのは、ラテン語の文献が読めるカトリック系の大学の研究者たちでした。
彼ら自身の多くがクリスチャンであり、キリスト教という「真理」をこの国にもたらした宣教師たちの苦難と殉教を称賛し、これを弾圧してきた秀吉や江戸幕府の圧政を糾弾する、という価値観に従って歴史を記述してきたからでしょう。
朝鮮出兵を行った秀吉は、戦前の日本では「大陸雄飛の先駆者」として称賛されました。逆に敗戦後は「侵略者」として否定的に描かれます。戦前の歴史を全否定する歴史学者たちもまた、秀吉や徳川政権によるキリシタン弾圧を糾弾してきたものです。
こうしたイデオロギー的歴史観にとらわれない実証的な研究―たとえば高瀬弘一郎氏がラテン語の原文史料を紹介した結果、イエズス会の活動の隠された一面が少しずつ明らかになってきました。しかし高校の日本史教科書の記述には、こうした話はまだほとんど反映されていません。

私も、長いこと「クリスチャン弾圧」をした秀吉や徳川を悪と思っていたけど、最近少しずつ変わってきて、この本でさらに磨きをかけました。
今年「長崎・天草潜伏キリシタン、世界遺産登録」となって、ますますそちらが美化されていくような気がします。
美しいのはいいのですが、真実は認められなければいけないと思います。

………

これらはミスではないでしょうか。

P62 1885 壇ノ浦の戦い
P321  板倉重政

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: ☆日本史・古典☆
感想投稿日 : 2018年8月15日
読了日 : 2018年8月15日
本棚登録日 : 2018年8月15日

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