代理母、はじめました (単行本)

著者 :
  • 中央公論新社 (2021年2月20日発売)
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感想 : 138

垣谷美雨さんの小説は8冊目。
タイトルそのままのわかりやすいテーマがあり
中には実際に起こるいろいろな問題がちりばめられていて
「そうそう!」と、時に笑いながら読みます。

この本が今までと違うのは、20年後ということ。
だから今起こっている問題がさらに進んでいるというか
デフォルメしている感じ。

それで「代理母」は今どうなっているのか?
調べてみたら、日本ではできず
裕福な人がアメリカやロシアに行って実現できるとのこと。
戸籍では特別養子縁組になります。

そしてそんなにまで子供の欲しい人の発言と
産婦人科医倉持芽衣子の感想は次のようなもの。

〈「学生時代の友人たちにはみんな子供がいます。同窓会でも言われたんです。『麗子は子供がいなくて自由でいいわね』って。」
友人の言う通りではないか。なぜ、そんなにつらそうに顔を歪めるのか。
「卒業後もずっと一生友だちでいられると思っていたのに、あんなにきつい皮肉を言うなんて」
皮肉じゃなくて本心ではないのか。子供がいなければ自分の人生を自由に生きることができる。経済的にも段違いに楽だし、仕事に邁進したり、趣味や旅行を楽しめる。それに比べて、子持ちとなれば、お金や自由時間がなくなるだけでなく、やれ学校でイジメに遭っただの、成績が悪くて進学できないだの、名もない大学だから就職できないだの、派遣社員だと嫁が見つからないなどと、何歳になっても心労が尽きない事例は人生相談を読んでいれば山ほどでてくる。(中略)
―子供は諦めて、自分の人生を楽しく生きるという選択もありますよ。あなたの服装や雰囲気からして裕福そうだし、私も現に自分一人の人生を選んでいます。
そう言いたいのを私はぐっと我慢していた。〉

「代理母」というビジネスは確かに合理的と思います。
合理的、私は好きです。
でもそれを養子縁組に適用するのは、どうかなと思います。

特別養子縁組で養子になった女性の相談を、
テレフォン人生相談できいたことがあります。
中学生位まで普通の親子だと思っていた。
それからも問題なく暮らしていた。
その後自分の産んだ子供について養親が口出ししてくるのが嫌になって離縁した。
今彼女は30代で、最近養親の姿を久しぶりに見た。
養父が養母の車椅子を押していた。
自分はこのままでいいのか。
そんな内容だったと思います。

特別養子縁組で養子になった人の本音をきくのは初めてだったし、
人生相談に登場する人には、しばしば悪人がいるのに
この相談では優しい人ばかりで。
すごく切ない気持ちになりました。

日本で今「代理母」が認められていないのは
私の知らない様々な理由があるのでしょう。
死刑賛成、安楽死賛成の私の性格では「とても良いと思う」と言いそうですが
いや、やはりそんな単純なのものでは…反対かも。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: ☆小説☆
感想投稿日 : 2021年4月24日
読了日 : 2021年4月24日
本棚登録日 : 2021年4月24日

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