美術は宗教を超えるか

  • PHP研究所 (2021年5月22日発売)
3.60
  • (3)
  • (10)
  • (4)
  • (2)
  • (1)
本棚登録 : 183
感想 : 14

表紙はダヴィンチの《サルヴァトール・ムンディ》
え?見たことないなぁ。

サウジアラビアの皇族の所有なので、見られないそうです。
イスラム文化には建築やタイル装飾、ミニアチュールなどありますが、いわゆる「美術」らしきものはほとんど見あたらないし、「美術館」もない。
でもアラブ各国にはオイルマネーを手にした富豪が印象派作品をたくさん持っているという事実があるそうです。
面白いですね。

しかしこの本で一番面白かったのは、
カラヴァッジョのデビュー作《聖マタイの召命》です。
5人の中の誰がマタイなのか?
いわゆる「マタイ論争」「マタイ問題」
それについての様々な解説の後、マタイの三点の連作が登場。

《聖マタイの召命》《聖マタイの殉教》《聖マタイの霊感》
そこに、第二次世界大戦で消失してしまった
一作目の《聖マタイの霊感》が提示されます。
おそらく依頼主の意向を受けて書き直ししたことでボツになった作品。
そのマタイを見ると、現存する《聖マタイの召命》の
「左端の男」との共通点が見られるのです!

しかし、作者に読み方を限定する権限はなく、他の解釈をする人がいても、必ずしも批判すべきものではない、と宮下さんは言います。

絵の解釈は何通りもあります。
ただし忘れてはならないのは、画家の側は神を念頭に置いて作品を書いているということ。

また、イコンをはじめ、宗教美術はそもそも偶像ではない。
イコンも聖書自体も「目に見えないもの」に通じる窓であり、可視化されないものを信じるのが宗教だと宮下さん。

佐藤優さん、話が弾んでとても楽しそうでした。
もちろん、私も面白かった。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 池上・出口・佐藤
感想投稿日 : 2021年7月5日
読了日 : 2021年7月5日
本棚登録日 : 2021年7月5日

みんなの感想をみる

ツイートする