知の仕事術 (インターナショナル新書)

著者 :
  • 集英社インターナショナル (2017年1月12日発売)
3.31
  • (12)
  • (56)
  • (43)
  • (24)
  • (6)
本棚登録 : 545
感想 : 60

この本に続いて、池上彰さん&佐藤優さんの『僕らが毎日やっている最強の読み方』を読みました。
似たような方針なので、続けて書きます。

このお三方の共通するところは「反・反知性主義」だと思います。
新聞・本・雑誌・ネットを活用し、
忙しい中上手に時間を管理し、
資料の整理整頓も上手。

池澤夏樹さんが池上さん佐藤さんと大きく異なるのは
「埼玉大学理工学部物理学科中退」というところ。
なんで卒業しなかったのか、気になります。

そしてこの本に彼の理系っぽさがちょこちょこ出ています。
整理整頓の工夫や、新しいハードウェアを積極的に利用していること、
そして池上&佐藤より「古典がちょっと苦手そう」です。

でも次の二点が、池澤さんの中の文系っぽい部分で、
とても面白かったので、ここにのこしておきます。

●読書とは、その本の内容を、自分の頭に移していく営みだ。
きちんと読んだ本はその先、自分が物を考えるときに必ず役にたつ。
「あの本の作者が言っていたことが、いまここで応用できるな」という場面が増え、
言ってみれば世間との対立の場でも力強い武器となる。
そして役に立つ本が増えれば増えるほど、
物の見方が複眼的になり、
うまく物が考えられるようになっていく。
これはディベートで相手を負かすためでも、
物知りぶって威張るためでもなく、
自分なりの世界図を自分の中に構築するために必要なこと。

●そもそも人類は狩猟・採集を捨てて農耕など始めたのが間違いだった、
まして都市を築いて文明など作ったのが大間違い。
狩猟と採集ならばのんびりと遊び半分で暮らしていけた。
どうしても食料が不足したときは飢えて死ぬだけのこと。
他の動物はそれで満足している。
それなのに農業を始めて、穀物という備蓄可能な食料を得た。
備蓄可能はすなわち強奪可能だから戦争というものが始まった。
余剰の穀物を一ヵ所に集めて、人を集めて、都市が生まれる、
この高密度の社会が生み出す文化を文明と呼ぶ。
それに追いまくられて必死で働かされているのが我々。
いまさらもとには戻れないけれど。

池澤さんは基本的に締め切りは守るようにしているそうです。
制作側の事情がよくわかっているから。

来年から新聞の連載が始まるとありました。
朝日新聞ならいいな。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: ☆本と言葉☆
感想投稿日 : 2018年4月7日
読了日 : 2017年4月28日
本棚登録日 : 2017年4月28日

みんなの感想をみる

ツイートする