オン・ザ・ロード (池澤夏樹=個人編集 世界文学全集 1-1)

  • 河出書房新社 (2007年11月9日発売)
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感想 : 81
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わりと好きで読んでいる池澤夏樹のセレクト世界文学集の1番目という点に興味を惹かれて手にとってみた。
初めは若者の日常や次々とでてくる友人の描写で散漫な印象だが、巻末の著者来歴を読んでこの小説が著者と友人の実体験をベースにしている事を知ってとにかく読んでみようと。
安定した平凡な日常生活を退屈と感じ、移動、スピード、パーティー、ジャズ、女…とにかく変化を求めていく。大事なのは今を思い切り感じることという感じ。ディーンの気分が乗ってきたときは「いいね!」が決め台詞。望まれる良い市民の型に価値を認めない。お金が全く無いことなど日常茶飯事。その価値観のまま生きたであろう著者はおそらく酒と麻薬で体を悪くし、友人も行き倒れ同然で二人共40代で早死している。著者の復帰兵という来歴の影響もあるのかもしれないが、身を守る意識が薄い。小説の中の友人は浮浪者の子供で犯罪に慣れて育ったせいもあるだろうが、さらにぶっとんでいる。
アメリカ大陸を横断する途中に味わいあるストーリーがあるのだろうという期待は裏切られる。時速170キロでとばし、広大な距離を縦横無尽に軽々と移動していく。
いわゆる世界文学の名作という固まったイメージから離れるが、1950年代では新しさを感じさせたのではないか。何度も書き直して出来上がった作品らしい。文体や主人公が未知にむかって進んでいく感じは村上春樹ものに似ていると感じる。文学者の像としても学者、知識人の路線でない新しいタイプというのが面白さのポイントでは。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 03小説、海外、現代
感想投稿日 : 2018年7月9日
読了日 : 2018年7月8日
本棚登録日 : 2018年7月9日

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