結果を出し続けるために (ツキ、プレッシャー、ミスを味方にする法則)

著者 :
  • 日本実業出版社 (2010年11月26日発売)
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羽生善治氏が、将棋における”結果を出し続けるための秘訣”を綴った一冊。先日発売されたばかりの、梅田望夫氏の「どうして羽生さんだけが、そんなに強いんですか?」に対する”アンサー本”として読むこともでき、非常に興味深い。そのため、大局観と構想力という2点にフォーカスを絞って読んでみた。

◆羽生氏が語る、大局観と構想力について
・大局観
羽生氏が語る大局観とは”全体像がどうなっているかを把握するようなイメージ”、”ロジカルな積み重ねの中から育ってくるものだが、因果関係は説明しずらい”、”その人の本質的な性格、考え方がよく反映されるもの”である、とのこと。また、直接的に大局観をあらわしたものではないが、”幾何学的なアプローチとして、その局面を「形としてどうか」という目でみること”、という記述もあり、ここにも大きなヒントが隠されていそうである。
・構想力
一方で、構想力についてはあまり具体的な記述がない。裏を返せば、構想力の本質とは、構想を練りすぎないというところにあるのではないだろうか。構想を練りすぎると、メンタルが”筋書きにない要素”の影響を受けやすくなってしまうからだ。”ツキ”、”プレッシャー”、”ミス”という自分ではコントロールしえない要素を、プロセスとしてあらかじめ織り込んでおくということがポイントのように思える。

◆二冊の本を通して見えてきたこと
将棋の世界においても情報共有がすすみ、”戦法や型をぶつけあう時代”から”人対人がぶつかりあう時代”へと、変化している様子が伺える。その中で、羽生氏の”人としての強さ”を形成しているのは、以下の二点ではないだろうか。

・露出コントロールのうまさ
羽生氏自身、情報共有の重要性を説く一方で、「調理の根幹は一人でやります」とも述べている。おそらくオープンにする情報とクローズドにする情報との線引きに、相当長けているのではないだろうか。情報共有する際に、「あの羽生氏がここまでオープンにしているのだから」と印象付け、他の棋士があらぬボロを出した瞬間、そこに見える人間の本質を、しっかりと捕まえているものと推測される。
・横のつながりからのフィードバック
羽生氏は将棋界の第一人者として、他のジャンルの第一人者と交流する機会も多い。その横のつながりから享受したものを抽象化し、将棋の戦いにフィードバックしている様子が伺える。

最後に、同じタイミングで将棋をテーマとする本を出した羽生氏と梅田氏だが、本当に幸せな関係だなと思う。将棋の世界を、深める羽生善治、広める梅田望夫。二人のつながりも、結果を出し続けている。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: Web
感想投稿日 : 2010年11月27日
読了日 : 2010年11月27日
本棚登録日 : 2010年11月27日

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