物理学とは何だろうか〈下〉 (岩波新書 黄版 86)

著者 :
  • 岩波書店 (1979年11月20日発売)
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(2015.11.30読了)(2007.03.10購入)(1999.04.05第36刷)
【ノーベル物理学賞】1965年
この本の上巻を出版して、この下巻を執筆している途中の1979年7月8日に著者は亡くなられたとのことです。この本が絶筆ということになります。
第Ⅲ章はもっと手直ししたかったようですし、それに続く章が書かれないまま終わってしまいました。第Ⅲ章の後には、この本を書くきっかけになったという、講演の記録「科学と文明」が収録されています。
第三章では、熱力学の話をしたかったようなのですが、残念ながらまったく理解できませんでした。それだけ物理学者も、四苦八苦したのだろうと思います。

【目次】
第Ⅲ章
1 近代原子論の成立
  ドルトンの原子論
  気体の法則、化学反応の法則
2 熱と分子
  熱のにない手は何か
  熱学的な量と力学的な量
  分子運動の無秩序性
3 熱の分子運動論完成の苦しみ
  マックスウェルの統計の手法
  エントロピーの力学的把握
  ロシュミットの疑義
  力学法則と確立
  平均延べ時間(滞在時間)
  エルゴード性を支えとして
  ロシュミットの疑問の解明
  物理学生のための補足
  二十世紀への入口
引用出典
科学と文明(岩波市民講座・講演)
解説  松井巻之助

●フィロソフィー(172頁)
フィロソフィーは哲学と訳しているんですが、語源から言いますと知識を愛するということですね。フィルというのは愛するということなんだそうで、例えば音楽でフィルハーモニーというのがありますが、あれは調和を愛するという意味なんだそうです。ソフィアというのは知恵とか知識とかいうことです。
●色彩論(180頁)
ニュートンが発見しましたのは、白色をプリズムで分解すると七色のスペクトルが出る、従って虹の七つの色の合成が白い色である、という考え方です。ゲーテはこれに非常に反対しまして、そういうことは考えられないということで、彼自身いろんな実験をやって、ニュートンの対抗する光の理論をつくろうと、『色彩論』という厖大な著述をしてニュートンを批判しています。
●朝永さんの執筆の意図(232頁)
「素材の組み換えを行い、多くの天才たちの考え方の秘密や問題の立て方を明らかにしようと努力した」
この本の上巻におけるケプラーのいわゆる「ケプラーの法則」に到達する過程、カルノーの「カルノー・サイクル」、クラウジウスの「エントロピー」という重要な概念導入の経路などにおけるこれらの天才たちの思考の進め方の追及、特に下巻におけるマックスウェルとボルツマンという悲劇的な死を迎える二人の天才物理学者の熱の分子運動論確立への道程にたいする先生の執拗ともいえる追及は圧巻です。

☆関連図書(既読)
「鏡の中の物理学」朝永振一郎著、講談社学術文庫、1976.06.30
「物理学とは何だろうか(上)」朝永振一郎著、岩波新書、1979.05.21
(2016年5月20日・記)
(「BOOK」データベースより)amazon
本書の完成を前に著者は逝去された。遺稿となった本論に加え、本書の原型である講演「科学と文明」を収める。上巻を承けて、近代原子論の成立から、分子運動をめぐる理論の発展をたどり二十世紀の入口にまで至る。さらに講演では、現代の科学批判のなかで、物理学の占める位置と進むべき方向を説得的に論じる。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 物理・化学
感想投稿日 : 2016年5月20日
読了日 : 2015年11月30日
本棚登録日 : 2015年11月28日

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