李鴻章――東アジアの近代 (岩波新書)

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  • 岩波書店 (2011年11月19日発売)
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「李鴻章」岡本隆司著、岩波新書、2011.11.18
224p ¥798 C0222 (2017.09.06読了)(2017.08.31借入)
副題「東アジアの近代」
陳舜臣著「中国の歴史」全14巻、を読んだついでに近代日本にかかわりの深い李鴻章、孫文、袁世凱を読んでおくことにしました。手始めに李鴻章です。
李鴻章の軍隊は、私設的軍隊です。装備を近代化して強くしています。西洋の軍艦も購入しています。清の中央政府にはとてもできなかったことです。
日清戦争後の下関条約交渉の時は日本にやってきています。日本人の暴漢に襲われています。けがを負った後にも交渉の席に出てきています。
清朝にとっては、朝鮮、台湾、ベトナム、琉球、は直後に統治はしていないけど、属国ということで、支配下にはあるという扱いになっています。琉球は、日本の支配下にはいり、ベトナムはフランスの植民地になってゆきます。朝鮮、台湾も日本の支配下にはいり、満州も独立した国になってゆきます。
李鴻章は、この過渡期に立ち会ったことになります。

洪秀全 太平天国
曽国藩 師

【目次】
プロローグ―下関の光景
第1章 青年時代
1 生い立ち
2 黄昏
第2章 動乱のなかで
1 太平天国
2 幕僚の日々
3 転機
第3章 浮上
1 進軍の興起
2 督撫重権
3 「協力」の時代とその終焉
第4章 明治日本
1 清朝と日本
2 日清修好条規
3 台湾出兵から琉球処分へ
第5章 「東洋のビスマルク」
1 「海防」と「塞防」
2 朝鮮
3 ベトナム
4 「洋務」の運命
第6章 「落日」
1 日清戦争
2 親露への旋回
3 最後の舞台
エピローグ―新しい時代へ
あとがき
参考文献について
李鴻章略年譜
索引

●洋式装備(60頁)
李鴻章は上海に到着してまもなく、外国軍・常勝軍の作戦を目の当たりにし、その洋式装備、とりわけ新式鉄砲の威力に驚嘆、自軍の刀矛や火縄銃では役に立たないことを痛感した。そこで急速に装備の改善を進め、1863年中には、小銃はもとより開花砲(榴弾砲)をも配備して、淮軍は当時の中国で、最新鋭の武装を誇るようになったのである。
●琉球(113頁)
琉球は建国以来、明朝の朝貢国、「属国」であった。清代に入ってもその関係は続いていた一方で、17世紀のはじめ、薩摩藩の征服をうけ、日本にも属していた。
●台湾は化外の民(115頁)
日本の側は、清朝にとって台湾の「生蕃」は「化外の民」であり、統治外の存在だとの姿勢を明言した、とみた
●琉球処分(124頁)
琉球を沖縄県に編入した「琉球処分」は、清朝にとって衝撃であった。日清修好条規第一条はその過程で効力を失い、恐れていた「属国」の滅亡が、ついに現実と化したからである。
●海防(128頁)
「海防」とは字面だけなら、沿海の防衛しか意味しない。けれども当時は、海軍そのものの組織、それに必要な兵器・艦船、あるいは物資の購入・製造に加え、鉱山の採掘、鉄道・海運・電信などの通信交通手段の導入、さらには士官の訓練・技官の養成など、軍事的なインフラストラクチャーの構築事業も含んでいた。
●属国自主(140頁)
朝鮮は清朝の属国であり、内政外交は朝鮮の自主である

☆関連図書(既読)
「坂の上の雲(一)」司馬遼太郎著、文春文庫、1978.01.25
「日清戦争-東アジア近代史の転換点-」藤村道生著、岩波新書、1973.12.20
「日清・日露戦争」原田敬一著、岩波新書、2007.02.20
「中国の歴史(12) 清朝二百余年」陳舜臣著、平凡社、1982.12.15
「中国の歴史(13) 斜陽と黎明」陳舜臣著、平凡社、1983.03.07
「中国の歴史(14) 中華の躍進」陳舜臣著、平凡社、
「世界の歴史(9) 最後の東洋的社会」田村実造著、中公文庫、1975.03.10
(2017年9月13日・記)
(「BOOK」データベースより)amazon
近代世界に入る清朝の困難な舵取りをした政治家・李鴻章(一八二三‐一九〇一)。旧式のエリート官僚だった彼は、内乱の平定に貢献して官界最高の実力者に登りつめた。二十年間、「洋務」「海防」を主導して外国列強と渡り合うも、日清戦争で敗北を強いられる。その生涯を一九世紀・清朝末期という動乱の時代とともに描き出す比類なき評伝。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 中国
感想投稿日 : 2017年9月14日
読了日 : 2017年9月6日
本棚登録日 : 2017年9月5日

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