シリア情勢――終わらない人道危機 (岩波新書)

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  • 岩波書店 (2017年3月23日発売)
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(2017.07.02読了)(2017.06.26借入)
副題「終わらない人道危機」
内戦により多くの難民が近隣諸国およびヨーロッパに流出し、また戦闘に巻き込まれて多くの市民が死傷しているシリア。いつになったら治まるのか、気になるところです。
シリアには、パルミラをはじめとする多くの遺跡もあります。ISが、遺跡を爆破して破壊したというようなニュースを耳にすると、歴史好きとしては残念でなりません。
ニュースで聞いていると内戦は、シリア政府と反政府勢力とイスラミックステートの三つ巴のような印象ですが、この本を読むとそんなに簡単な図式ではなさそうです。
反政府勢力は、まとまりがなく主導権を握れるところはなさそうです。従ってアサド政権を退陣させるだけの力はなさそうです。イスラミックステートは、ロシアとトルコが協力して壊滅に追い込みそうな勢いです。
このままだと、シリアはアサド政権の勝利で落ち着くのかと思われます。平和が訪れ、少しずつでも民主化が進んで行く事を祈りたいと思います。
妥協を許さないイスラム過激派は、おとなしくなって欲しいものです。

【目次】
はじめに
第1章 シリアをめぐる地政学
第2章 「独裁政権」の素顔
第3章 「人権」からの逸脱
第4章 「反体制派」のスペクトラ
第5章 シリアの友グループの多重基準
第6章 真の「ゲーム・チェンジャー」
おわりに
主な文献・資料
表 「反体制派」による主な連合組織・合同作戦指令室
年表
索引

●シリアの状況(ⅱ頁)
シリア政策研究センターが2016年2月に公表した報告書によると、2015年末の段階で47万人が死亡、190万人が負傷し、総人口(2300万人)の46%に相当する1000万人強が住居を追われ、うち636万人が国内避難民となり、311万人が難民として国外に逃れ、また117万人が国外に移住したという。
●化学兵器の廃棄(75頁)
2014年6月までに、申告された化学物質はすべてがノルウェーとデンマークの船舶によってイタリアへ移送された。このうち、サリン・ガス、マスタード・ガスなどの製造に使用される、危険度の高い化学物質約570トンは、廃棄設備を備えた米国籍船が公海上で廃棄し、作業は8月に完了した。一方、危険度の低い化学物質約1300トンは、フィンランド、英国、米国の工場に移送され、廃棄された。またシリア国内の化学兵器生産工場もそのすべてが破壊された。
●反体制派(106頁)
シリアの友グループは、シリア内戦当初からアサド政権に退陣を求める強硬な姿勢をとってきたが、同政権を打倒し、それにとって代わり得るような有力な「反体制派」を見つけることができなかった。
「反体制派」は、雑多で、まとまりを欠き、政治手腕に乏しかった。

☆関連図書(既読)
「イスラム国の正体」国枝昌樹著、朝日新書、2015.01.30
「ルポ難民追跡 バルカンルートを行く」坂口裕彦著、岩波新書、2016.10.20
(2017年7月4日・記)
(「BOOK」データベースより)amazon
「今世紀最悪の人道危機」と言われ幾多の難民を生み出しているシリア内戦。「独裁」政権、「反体制派」、イスラーム国、そして米国、ロシア…様々な思惑が入り乱れるなか、シリアはいま「終わりの始まり」を迎えようとしている。なぜ、かくも凄惨な事態が生じたのか。複雑な中東の地政学を読み解く。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 中東情勢
感想投稿日 : 2017年7月4日
読了日 : 2017年7月2日
本棚登録日 : 2017年6月30日

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