あこがれ: 石川啄木詩集 (角川文庫 し 1-1)

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  • KADOKAWA (1999年1月1日発売)
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(2012.11.07読了)(2005.10.29購入)
【11月のテーマ・[石川啄木を読む]その①】
岩手県の生んだ偉人と言うと、宮沢賢治、石川啄木、原敬、新渡戸稲造、等が挙げられるのだと思います。宮沢賢治は、童話作家ということで、割と多くの読者がいると思います。絵本やアニメ映画にもなっています。僕もいくつかの作品を読みました。
石川啄木となると、いくつかの短歌を教科書で習ったり、テレビ・新聞などで、取り上げられるのを見たり聞いたりという程度で、彼の作品をじっくり読むということは、あまりないのではないでしょうか。(彼のファンでよく読んでいる方には、ごめんなさい。)
僕も、郷土の偉人でありながら、ほとんど読んでいません。
今年(2012年)は、石川啄木の没後100年なのだそうです。1912年4月13日に亡くなっています。26歳だったそうです。処女詩集「あこがれ」を自費出版したのは、19歳のときです。
いまでは、10代のうちに認められて本を出す人もちらほらいますが、それにしても驚きです。解説で俵万智さんも「『あこがれ』は、肩に思いきり力の入った詩集だ。言葉をあやつる才能を、これでもかこれでもか、と見せつけてくれる。」と書いているように、19歳にしては、格調が高く、誇張の多い表現を多用していて、とても読む人を彼の詩の世界に入りこませてなどくれない内容、と思います。
俵万智さんも「誌を読む一人の読者としては、感心よりも感動を、作品に求めたい。」と言っています。『あこがれ』には、残念ながらそのような作品は、入っていません。
この本には、処女詩集『あこがれ』以後の作品も収められていて、そこには、彼の短歌と同様の親しみやすい作品もあります。そこにたどり着くには、本の半分分を我慢するか、後半だけ読むか、ということになります。後半を先に読んで、後で最初に戻るのもいいかもしれません。
たとえば、後半のほうにある「蟹に」という作品は、以下のようにはじまります。
潮満ちくれば穴に入り、
潮落ちゆけば這ひいでて、
ひねもす横にあゆむなる
東の海の砂浜の
(後略)

【目次】
詩集『あこがれ』
『あこがれ』以後
詩稿ノート『呼子と口笛』

年譜  山岸郁子
解説  俵万智

●「落葉の煙」より(117頁)
過ぎぬ、ほろびぬ、夢のあと。
今ただ冷ゆる灰のこし、
のぼる煙も、見よやがて、
地をはなれて、消えて行く。
●「水無月」より(175頁)
砂山は長くつづきて、水無月の
日は照りかヘリ、砂は蒸す。
海草の香はいと強く
流れぬ。あはれ。日に酔ひて
啼くなる鳥の磯雲雀、
歌はも高し。
●「馬車の中」より(180頁)
花咲かず、雨の降る日の
街をゆく馬車の中なる
年若き我は旅人。
わが泣くをとがめ給ふな。
函館の少女子達よ、
煙草吹く年寄達よ、
情ある乗合人よ、
わが泣くをとがめ給ふな。

☆石川啄木さんの本(既読)
「ROMAZI NIKKI」石川啄木著、岩波文庫、1977.09.16
(2012年11月7日・記)

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 石川啄木:詩人
感想投稿日 : 2012年11月7日
読了日 : 2012年11月7日
本棚登録日 : 2012年11月6日

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