ブス論で読む源氏物語 (講談社+アルファ文庫 A 41-1)

著者 :
  • 講談社 (2000年1月1日発売)
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感想 : 5
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(2007.05.10読了)(2005.04.02購入)
単行本で出版した時の題名は、「「源氏物語」の身体測定」(三交社、1994年11月刊)ということです。文庫は購入する時は、原題をよく確認しないと、単行本と文庫本で、同じ本を購入したりしますので、充分気をつけてください。
うちの神さんの場合は、好きな作家の本は、単行本で読んでいるのを承知の上で、文庫本も買ってきて読んでいますので、そういう場合は、別ですけど。
要するにこの本は、「源氏物語」に登場する人物達の身体特徴がどのように記述されているか。身体特徴によって物語の中での扱いがどのように変わってくるのか。平安時代の貴族社会から鎌倉時代の武家社会へと変わろうとするなかで、社会の変化が物語のなかへどのように影を落としているのか。作者の紫式部の生活経験が物語の中にどのような形で影響を与えているのか。等々、について考察した本です。
「源氏物語愛の渇き」に比べて、多少退屈な面もありますが、興味深い話もありますので、全体的には面白く読めます。

平安時代は、美貌至上主義で、その元は、仏教ということなのですがどうなのでしょうか。
「浄土教との出会いは、理想の体はかくあるべしという身体論との出会いでもあった。」(269頁)
「「人を見た目で判断してはいけない」という道徳観が定着したのは、儒教思想が根付いた近世以降のこと。」(7頁)
「生まれつきの容貌の悪さが前世の悪さに結び付けられて、いわれなき差別を受けたり、美女は心も美しく、ブスは心も醜いとされた平安時代」
第二次大戦での敗戦とともに、儒教思想が否定され、繁栄のきわみの平成時代にも平安貴族の思想が戻ってきたのでしょうか?

☆大塚ひかりの本(既読)
「源氏物語愛の渇き」大塚ひかり著、KKベストセラーズ、1994.02.05
「大塚ひかりの義経物語」大塚ひかり著、角川ソフィア文庫、2004.09.25
(2007年5月12日・記)

☆関連図書(既読)
「絵草紙源氏物語」田辺聖子著・岡田嘉夫絵、角川文庫、1984.01.10
「新源氏物語(上)」田辺聖子著、新潮文庫、1984.05.25
「新源氏物語(中)」田辺聖子著、新潮文庫、1984.05.25
「新源氏物語(下)」田辺聖子著、新潮文庫、1984.05.25
「『源氏物語』を楽しむ」山口仲美著、丸善ライブラリー、1997.07.20

(「BOOK」データベースより)amazon
男は美女とだけ恋をするのだろうか。現実には愛されるブスだってたくさんいる。官能的な恋の絵巻『源氏物語』にも登場する絶世の美男子光源氏に愛された幸せなブスたち。美貌至上主義の平安貴族文化の中で、彼女たちが愛されたのはなぜだったんだろう?あまたある「源氏物語論」の中でも異彩を放つ、外見からの登場人物分析によって、『源氏』をよく知らない人にも読みやすい恋愛論、女性の美のあり方論にもなっている。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 源氏物語とその周辺
感想投稿日 : 2007年6月17日
読了日 : 2007年5月10日
本棚登録日 : 2007年5月10日

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