原発社会からの離脱――自然エネルギーと共同体自治に向けて (講談社現代新書)

  • 講談社 (2011年6月17日発売)
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(2012.10.17読了)(拝借)
【東日本大震災関連・その104】
副題「自然エネルギーと共同体自治に向けて」
かみさんの本棚から拝借しました。東日本大震災の後比較的早く出版された本です。
福島第一原発の事故により、原子力発電は事故が起こると実に大変な事態を引き起こすことが実感されました。そこで、原子力以外の方法で、電力を確保する方法が可能なのかについて考察した本です。
海外の事例や東京、長野での取り組みが紹介され、工夫次第で、原発社会から自然エネルギー社会への転換が可能であろうと・・・・・・。

【目次】
まえがき 「原発をどうするか」から「原発をやめられない社会をどうするか」へ 宮台真司
1章 それでも日本人は原発を選んだ
2章 変わらない社会、変わる現実
3章 八○年代日本「原子力ムラ」探訪
4章 欧州の自然エネルギー事情
5章 二○○○年と二○○四年と政権交代後に何が起こったか
6章 自然エネルギーと「共同体自治」
7章 すでにはじまっている「実践」
あとがき フクシマ後の「焼け跡」からの一歩  飯田哲也

●無謬原則(45頁)
行政官僚制には「無謬原則」がある。官僚機構のなかでは人事と予算の力学が働くので、「それは間違っていた」とは誰も言い出せない。これは大東亜戦争中の海軍軍令部や陸軍参謀本部問題でもあります。(宮台)
●霞が関文学(70頁)
霞が関文学=官公庁の文章
「霞が関文学」の本質は「フィクションと現実を繋いでいく言葉のアクロバット」です。(飯田)
●自己の時代(76頁)
僕は『終わりなき日常を生きろ』(筑摩書房)という95年の本で、冷戦体制が終わる時代が、科学が輝く時代の終焉と重なると書いています。「未来の時代」が終わり、「自己の時代」が本格的に始まります。(宮台)
●アメリカ依存(86頁)
日本で奇妙なのは、エネルギーを外から得なければだめだという問題が安全保障に繋がってないことです。単にアメリカに依存すれば大丈夫という話ですべてスルーされるのがおかしい。普通は食料とエネルギーはいざとなったら自給できなくてはいけないという話になるはずです。(宮台)
●原子力推進派(114頁)
原子力発電所をひとつ作ると、非常に大きな波及効果がある。発電量も大きく、温暖化防止にもなる。原子力を推進すれば、技術も磨かれ、産業としてもエネルギー対策としても発展する有望な技術だ、と考えている。(飯田)
●再処理と直接処分の経済性(119頁)
福島瑞穂さんが国会で「再処理と直接処分の経済性を比較したことがあるのか」と質問して、当時の日下一正資源エネルギー庁長官が「今までは検討したことがありません。これから検討します」と答弁した。実は日下さんの後ろのキャビネットには、直接処分のほうが安くつく報告書があったのです。(飯田)
●蓄電池付き(150頁)
自動車の蓄電池を活用するより早いのは蓄電池付きの冷蔵庫やテレビかもしれません。計画停電になって冷蔵庫が止まり、みんなが困った。だから蓄電池付き冷蔵庫の発売がすぐ決まりました。技術的には簡単です。(飯田)

☆関連図書(既読)
「私たちにとって原子力は・・・」むつ市奥内小学校二股分校、朔人社、1975.08.03
「食卓にあがった死の灰」高木仁三郎・渡辺美紀子著、講談社現代新書、1990.02.20
「私のエネルギー論」池内了著、文春新書、2000.11.20
「ぼくとチェルノブイリのこどもたちの5年間」菅谷昭著、ポプラ社、2001.05.
「これから100年放射能と付き合うために」菅谷昭著、亜紀書房、2012.03.30
「原発と日本の未来」吉岡斉著、岩波ブックレット、2011.02.08
「緊急解説!福島第一原発事故と放射線」水野倫之・山崎淑行・藤原淳登著、NHK出版新書、2011.06.10
「津波と原発」佐野眞一著、講談社、2011.06.18
「福島の原発事故をめぐって」山本義隆著、みすず書房、2011.08.25
「官邸から見た原発事故の真実」田坂広志著、光文社新書、2012.01.20
「飯舘村は負けない」千葉悦子・松野光伸著、岩波新書、2012.03.22
(2012年10月28日・記)

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 事件・事故・災害
感想投稿日 : 2012年10月27日
読了日 : 2012年10月17日
本棚登録日 : 2012年10月16日

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