ミャンマーの柳生一族 (集英社文庫)

著者 :
  • 集英社 (2006年3月17日発売)
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感想 : 88
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(2007.11.21読了)(2007.11.03購入)
アマゾンで「ミャンマー」をキーワードにして検索したら表示されてきた本の一冊です。題名を見たときは、タイで活躍した山田長政のように、ビルまでは、柳生一族が活躍したという話なのかと勝手に想像して、よく調べる気にはなりませんでした。
ところが、朝日新聞の書評コラムで、最近読んで面白かった本の一冊として「ミャンマーの柳生一族」を取り上げているのを見て、読んでみる気になりました。

現代のミャンマーを日本の江戸時代に見立て軍情報部を柳生一族になぞらえて、日本人に分かりやすく説明しようという本でした。
作家の船戸与一氏から、ミャンマーを舞台にした小説を書くために、取材旅行に行くのでガイド兼通訳兼相談役として同行して欲しいと頼まれ、同行した際の旅行記でもあります。
船戸与一氏の成果は「河畔に標なく」として出版されている。
「もっとミャンマーのことを深く、そして楽しく知りたいと願う方は、高野秀行著「ビルマ・アヘン王国潜入記」と「西南シルクロードは密林に消える」をお読みいただきたい。」(229頁)ということです。

●2004年のヤンゴン(34頁)
ヤンゴンは十年前と比べて、びっくりするくらい変わっていなかった。確かに、高層ビルはいくつもある。車も何倍にも増えた。だが、逆に言えば、それだけである。
●服装(35頁)
ジーンズ姿の若者もいるのだが、正装としても私服としてもロンジー(ビルマ式腰巻き)を着用し続けているというのは驚くべきことだ。ロンジーはさっと洗えて、しかもすぐ乾く。日向に置けば、15分くらいではけるようになる。
●大学(55頁)
1997年にヤンゴン大学を市内から追い出し、郊外へ移転させた。しかも、大学院だけを残し、学部はもう学生をとらないことにしたという。ヤンゴン大学だけではない。マンダレー大学も同じ処分を受けたという。
●豆鉄砲(57頁)
タクシー運転手、ゾウ・ティンの話
「この豆はマ・ペというんだけど、10年くらい前まで政府が栽培を許さなかった。これは銃弾になるからだよ」
●中国国境ムセー(128頁)
ヤンゴンをはじめ、ミャンマーのどこにも売ってないようなしゃれた衣服が店の軒先から、露店からあふれている。仔細に見れば、それは私が中国で見慣れた「箸にも棒にもかからない安物の化学繊維」なのだが、どういうわけか、ここではそれらが光り輝いて見える。
電気製品にしても、DVDプレーヤーのほか、CDラジカセ、ビデオデッキ、液晶テレビ、パソコン、デジタルカメラまで何でもある。
●ビルマ人が日本の会社で働くときのストレス(138頁)
「日本の会社では上司が自分に意見を聞く。会議でもどんどん発言して欲しいといわれる。それが辛い」
●民主主義の恐怖(144頁)
徳川幕府がキリスト教を恐れたのと同じくらい、ミャンマー幕府は民主主義を恐れている。そして、それが排外主義=孤立化=鎖国へとどうしても発展してしまうらしい。
●読書大国(192頁)
ミャンマーは知る人ぞ知る、読書大国である。
ヤンゴンやマンダレーはもちろん、地方のどんな小さな町にでも貸し本屋がある。実際に、ミャンマーでは電池やライターといった日用品を売る店より、貸し本屋のほうがたやすく見つかるくらいだ。それくらい、ミャンマー人はよく本を読む。

現代ミャンマーがよく分かる。ミャンマーについて知りたい方にお勧めです。

著者 高野 秀行
1966年10月21日 東京都八王子市生まれ
1989年 早稲田大学探検部在籍時に『幻獣ムベンベを追え』でデビュー
2006年 「ワセダ三畳青春記」で酒飲み書店員大賞受賞
(2007年11月29日・記)
☆関連図書(既読)
「アウン・サン・スーチー 囚われの孔雀」三上義一著、講談社、1991.12.10
「ビルマ 「発展」のなかの人びと」田辺寿夫著、岩波新書、1996.05.20

(「BOOK」データベースより)amazon
探検部の先輩・船戸与一と取材旅行に出かけたミャンマーは武家社会だった!二人の南蛮人に疑いを抱いたミャンマー幕府は監視役にあの柳生一族を送り込んだ。しかし意外にも彼らは人懐こくて、へなちょこ。作家二人と怪しの一族が繰り広げる過激で牧歌的な戦いはどこへ…。手に汗握り、笑い炸裂。椎名誠氏が「快怪作」(解説)と唸り仰天した、辺境面白珍道中記。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: アジア情勢
感想投稿日 : 2009年10月9日
読了日 : 2007年11月21日
本棚登録日 : 2007年11月21日

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