東方見聞録 (地球人ライブラリー 21)

  • 小学館 (1995年12月1日発売)
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感想 : 2
4

(2015.12.04読了)(2015.11.25借入)
いつか読みたいものと思って、手元にいつも
「東方見聞録」青木富太郎訳、現代教養文庫、1969.04.30
を置いているのですが、なかなか読めません。しょうがないので、強制的に読む手段として、図書館から長澤訳のこの本を借りてきました。
「東方見聞録」は、マルコ・ポーロが自分で書いたものではなく、彼がジェノヴァの牢獄にいたときに同じ牢獄にいたルスチケロという男に東洋への大旅行の話をして、その話を聞いたルスチケロが、書いたものといわれています。
この本の解説によると、マルコ・ポーロは、ヴェネツィアから日記やメモを取り寄せて、ルスチケロに提供した、と書いてあります。
書いてある内容を見ると、確かに記憶だけでこのような長い話は、特に土地の名前や、いつごろかというところは、難しかろうと思います。
「東方見聞録」の内容には、マルコ・ポーロが自分で体験したことと、伝聞が混じっており、さらに重複もあるということで、伝聞や重複部分を削除して、この本では、原文の3割か4割ぐらいしか訳されていないようです。
さらに、訳者が、この本の進行役になり、訳者の見たシルクロードの話が随所に出てきて、マルコ・ポーロの述べているところと比較しています。
わかりやすいといえば、そういう面もあるのですが、「東方見聞録」そのものを味わいたいという向きには、ちょっと残念なところです。
というところで、現代教養文庫版もいずれ読まざるを得ないでしょう。
マルコ・ポーロは、父親とおじさんが、中国の王様との約束を果たすための旅に同行するという形で、中国を目指します。
最初、ヴェネツィアから地中海を渡ってイスラエルに上陸し、トルコのアララット山あたりを経由し、ペルシャ湾方面を目指し、そこから船で、中国へ行くつもりだったのですが、船が貧弱だったので、シルクロード経由に切り替えます。この本の三章までが、その旅の様子です。マルコ・ポーロは、フビライに重用され、中国国内および、近隣への使者として派遣されたようです。そのあたりが、四章から六章です。
マルコ・ポーロたちは、ペルシャの王からの要請で、王妃を中国からペルシャに届けるための使者に随行することになり、船でペルシャまで行くことになります。
このあたりの話のついでに、日本の話が出てきます。後にコロンブスが、「東方見聞録」を読み、日本を目指して、アメリカ近海にたどり着いてしまいますが。
スリランカなどを経由して、無事王妃を届けた後に、ヴェネツィアに帰ることができました。
17歳で旅立ったマルコ・ポーロは、帰り着いたときには、42歳になっていたとか。
「東方見聞録」が出来上がったのは、1298年とのことです。印刷術は未発達の時代だったので、写本として広まった。従って、いろんな版が存在する。

【目次】
はじめに
一 マルコ・ポーロの旅のあらまし
二 トルコからパミールまで
三 カシュガルから上都へ
四 フビライ・ハーンの宮廷と首都
五 雲南・ビルマへの旅
六 マンジへの旅
七 帰国の途につく
八 インドから帰国まで
解説―後日譚―
リスト・オブ・ブックス

●ラピスラズリ(66頁)
ユーラシア大陸の中で、ラピスラズリはほとんどバダフシャンのコクチャ河の沿岸からしか産出しない。古代バビロニアやエジプトの古代王朝から、多くのラピスラズリの宝飾品が出土しているが、それはほとんどみなバダフシャン産のラピスラズリが、はるばる西アジアまで運ばれたのである。
●ハミ(85頁)
ハミでは見知らぬ人が宿を借りると、主人は妻に客人の望むようにしろと命じ二日も三日も田舎の家に行ってしまう。客人はその女を自分の妻のように一緒に寝たり、好き放題のことをする。女はみな別嬪で陽気で浮気だという。
●紙幣(125頁)
マルコは、この国で貨幣として紙幣が使われていることに感心した。中国では紙幣は宋代から交子と呼ばれて使われ始めた。フビライは1260年に交鈔という紙幣を発行し、金銀を使うことを禁じた。
●元朝滞在(198頁)
マルコ・ポーロの元朝滞在年次は、1274年半ば~1290年末が、正しい元朝に滞在した年次である
●ゾウの交尾(236頁)
オスのゾウは、交尾するときまず大地に穴を掘り、メスを人間のようにあおむけに入れる。これは、ゾウの性器が非常に腹部の方に寄っているためである。こうして雄ゾウは、人間と同じかっこうで交尾する。
(真偽のほどは、テレビなどで放映されるでしょうから、その際にご確認ください。)

☆長澤和俊の本(既読)
「張騫とシルクロード」長澤和俊著、清水書院、1972.10.20
「敦煌」長澤和俊著、レグルス文庫、1974.12.15
「シルクロード・幻の王国」長澤和俊著、日本放送出版協会、1976.06.20
「楼蘭王国」長澤和俊著、レグルス文庫、1976.07.30
「シルクロードの終着駅」長澤和俊著、講談社現代新書、1979.09.20
☆関連図書(既読)
「ジンギスカン」小林高四郎著、岩波新書、1960.02.17
「小説 マルコポー口」陳舜臣著、文春文庫、1983.04.25
「蒼き狼」井上靖著、新潮文庫、1954.06.
「敦煌」井上靖著、新潮文庫、1965.06.30
「蒙古襲来(上)」山田智彦著、角川文庫、1991.06.10
「蒙古襲来(中)」山田智彦著、角川文庫、1991.07.10
「蒙古襲来(下)」山田智彦著、角川文庫、1991.08.10
「蒙古襲来(上)」網野善彦著、小学館ライブラリー、1992.06.20
「蒙古襲来(下)」網野善彦著、小学館ライブラリー、1992.06.20
「蒙古来たる(上)」海音寺潮五郎著、文春文庫、2000.09.01
「蒙古来たる(下)」海音寺潮五郎著、文春文庫、2000.09.01
「「蒙古襲来絵詞」を読む」大倉隆二著、海鳥社、2007.01.15
「青嵐の譜」天野純希著、集英社、2009.08.10
(2015年12月8日・記)
(「BOOK」データベースより)amazon
今から700年前のアジアに6000人が宴を張ることのできる大広間を持つ壮麗な宮殿があった―遙かヴェネツィアから元朝中国、インド南洋諸島を25年を費やしてまわった男の驚嘆の記録。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 世界史
感想投稿日 : 2015年12月8日
読了日 : 2015年12月4日
本棚登録日 : 2015年12月1日

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