数学する身体(新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社 (2018年5月1日発売)
3.91
  • (8)
  • (15)
  • (11)
  • (0)
  • (0)
本棚登録 : 186
感想 : 13
4

現在の算数や数学などが、どのような変化を遂げてきたのかを古代文明から遡っていきます。それこそ、プラスやマイナスやイコールなどの記号がなかった時代、それぞれの計算をひとつひとつ証明しなければならなかった時代から、計算機、つまりコンピューターが生まれた過程までの長い道のりも書いてあります。
数学とは?計算とは?証明とは?人間と機械の違いは?心の定義、とにかく数学の世界を深く深く潜ってその考え方を紐解いていく。

もともとは指を使って数を数え、文字が十分に発達していなかったためコミュニケーションをとって数学自体が表現されていた時代。それが少しずつ計算や論理が人の体を離れ、道具として使われていきました。

数学において数多くの発明をしてきたと言われる
デデキント、チューリング、岡潔(おかきよし)などの著名な数学者のエピソードも面白く必読です。
 著者は、岡潔の数学に対する考え方にとても共感しており、岡潔によれば数学の中心にあるのは『情緒』だといいます。(数学なのに?なぜだろう。と、この時は思いました。)計算や論理は数学の本体ではなくて、肝心なことは、五感で触れることのできない数学的対象に関心を集め続けてやめないこと、だそうです。
生命を集中して数学的思考の流れになりきる、それが岡潔の無上の喜びだと筆者は語っています。(まさに表題の『数学する身体』です)

今まで数学は計算するための道具だと、そうとらえていた自分は、数学の情緒や哲学的な考えを知ることができたし、またコンピューターの成り立ちなども、数学が基礎にあってまた違った文化に触れられたような気がしました。

読書状況:未設定 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2022年2月10日
本棚登録日 : 2022年2月10日

みんなの感想をみる

コメント 0件

ツイートする