誰が天使を殺したの?「私。」と神が言った。
人生という長い道で、人は己の存在意義を得ようともがき苦しむものである。
貧しい家に生れた主人公のジェルソミーナは、粗野で横暴な旅芸人ザンパノに売られ、一緒に各地を転々としながら、妻としてザンパノを支えていく。
献身的な愛情を捧げるジェルソミーナをザンパノは虐げ、一人の人間としての尊厳を奪い続ける。
「私は美しくもなく、頭も悪く何の取り柄もない。私は何故生まれてきたの?これからどうやって生きていけば良いの?」
自分の人生を肯定できず、絶望に打ちのめされるジェルソミーナを、仲間のサーカス芸人が慰める。
「この石を見てごらん。この石だって何かの役割がある。この世にあるもので意味のないものは何一つない。」
彼の言葉に一筋の希望を抱き、ジェルソミーナはザンパノに寄り添って生きていく決意をするが・・・。
愛を与え続けても最後まで報われず、ジェルソミーナは一人孤独のまま命を落とす。
この映画はキリスト教色の強い映画だと言われているが、イエスの使徒達が自らの命をもって伝道していったように、ジェルソミーナもまた、自らの愛に殉死することにより、ザンパノを真の人間愛へと目覚めさせる。
映画のラストシーンでザンパノがジェルソミーナの死を知って慟哭するシーンは胸を打つ。
ジェルソミーナを演じたのは、この映画の監督フェデリコ・フェリーニの生涯の伴侶、ジュリエッタ・マシーナ。小柄で見た目は決して華やかではないが、そのチャーミングさと、高い演技力は他の追随を許さない。
大柄でグラマスな美人女優が妍を競い合うイタリア映画界で、マシーナはジェルソミーナのような可憐な菫の花であり、見る者の心の中に一際強い輝きを残し続けるのである。
- 感想投稿日 : 2015年9月1日
- 読了日 : -
- 本棚登録日 : 2015年9月1日
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