昨今の(ときに安易な)脱成長、アンチ資本主義に一石を投じる。
日本企業は、モノ生産中心の産業構造からの転換(著者の言葉で言う資本主義の非物質主義的転回)に乗り遅れ、余剰資金を投資どころか配当に回し、蓄積を失った。
労働力への教育的投資も怠り、今や環境負荷を下げることもできずにいる。
重要なポイントと思うのは、類書(例えば「人新世の資本論」)などと異なり、この本の著者は、環境破壊や格差拡大は経済成長至上主義が原因という立場をとっていないこと。むしろ、正しい成長路線を採ることでこうした問題の解決に向けて踏み出せるとの立場。
その具体的な施策のキーワードが、「社会的投資」。もっと言えば人的投資と脱炭素。
すくなくとも、資本主義の下で成長を目指すと格差が広がるからもう立ち止まって分配しよう、という議論よりはるかに前向きで建設的と私には思えた。
経済学の理論、データの裏付けのしっかりした骨太さも素晴らしい。
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- 感想投稿日 : 2022年2月20日
- 本棚登録日 : 2022年2月12日
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