2014.11記。
入江昭氏の(新旧)「日本の外交」と言えば、外交官試験のスタンダードな教科書。著者の作品はもちろんこれだけではないが、同じ新書でもあり、本書は事実上「三部作の最終作品」の位置づけに見える。
企業やNGOなど、国家という存在を乗り越えるアクター(Non State Actors)の動きなしに世界を語ることは不可能な現在、「『国益』の固守と発展という、伝統的な国際関係の概念が作り出した『パワーゲーム』はほとんど意味を持たなくなっている」(P.131)、と著者は問う。
国家というフィルターを通さない最新の歴史学では、地域間の人や物の移動をダイナミックに捉え直すのがトレンドだ。国家の役割を低く観ることに抵抗を覚える人もいると思うが、著者の主張が、こうした動きから目をそらせば日本が取り残されてしまう、との危機感を背景にしていることも同時に理解する必要があるだろう。
国家とは、「各自の地理と歴史とをとおしてのつながりがあるのだ、という原則」(P.56)に基づいて成立した。私自身は日本の「地理と歴史とをとおしてのつながり」に強い愛着と帰属意識を持っているが、同時にこの共同体がどのように変容していくのかについては、常に最新の知見を取り入れていきたいと願っている。
読書状況:読み終わった
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カテゴリ:
社会
- 感想投稿日 : 2019年1月5日
- 読了日 : 2019年1月5日
- 本棚登録日 : 2019年1月1日
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