歴史の終わりを超えて (中公文庫 あ 51-1)

著者 :
  • 中央公論新社 (1999年7月1日発売)
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感想 : 7
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2015.7記。

「雑学としての思想、エンターテインメントとしての哲学」

浅田彰氏は、(良い意味で)つまりはエンターテインメントとしての哲学を追求している。相応の読書体力があれば読めてしまい、目くるめく豆知識を速射砲のように繰り出し、難解な思想を文脈で何となく理解させる(理解した気分にさせる)ことに長けている。そして活躍の場は微妙にカジュアルな雑誌の「対談」。

「・・・近代資本主義国家は、さまざまな分裂を内包せざるを得ないがゆえに、それを裏打ちする統一性の幻想を生み出す必要があり、そのために過去の断片を適当につなぎあわせて国民的統一性のイデオロギーを捏造するわけです」(P67)
「自由民主主義と資本主義の勝利によってモダンな世界が普遍化するかに見えた瞬間、ポストモダンな『ネット』とプレモダンな『島々』への新たな分極化が生ずる。現代の世界のなかなかよくできたカリカチュアと言うべきでしょう」(P57)。

・・・まあこんな感じ。が、文脈の中ではすっと入ってくる。そして実学的にも「米国というスーパーパワー後の真空地帯に宗教の原理主義が生まれる」といった預言も適切になされている(本書は1990年代初頭に出版らしい)。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 思想、哲学
感想投稿日 : 2019年1月5日
読了日 : 2019年1月5日
本棚登録日 : 2019年1月1日

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