働きたくないイタチと言葉がわかるロボット 人工知能から考える「人と言葉」

著者 :
  • 朝日出版社 (2017年6月17日発売)
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本棚登録 : 989
感想 : 105
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うちの娘は語学が好きである。英語とか古文とか、文法の勉強自体が好きらしく、活用とかイディオムとか覚えたりが苦でないらしい。
これは語学は仕方なく学ぶものでそれ自体はめんどくて仕方ない、という私とはえらい違いである。
したがって、というか娘はなんとなく自分を文系と思っているようなのだが、いよいよコードさえ書かなくてもAIを使える時代がやってくる。そうなると語学そのものが好きなことはAIの本質理解の上で立派な武器なのでこの本を推薦してみた。そして案の定自分が先に読んでいる。

川添愛さんの本は何冊目かわからないがこちらも予想どおりおもしろい。「自動人形の城」とほぼ同じタイミングの出版であり、いずれも「面倒なことを機械にやってもらおうとして四苦八苦する」話なのだが、あえて言うなら「自動人形」はプログラミングの話、本書は人工知能の言語認識の話と言えるかもしれない。

言葉がわかる、とはどういうことか?最近理解が進んできたとおり、人工知能がやっているのは煎じ詰めれば「似たような用例の文章を鬼のように学習して質問にそれっぽい回答を返す」プロセスに他ならない。それっぽさ、の再現のためには、人間がなぜかできてしまう「聞き取り、話し、関係付け、論理を理解し、しかも言わずもがなの常識をわきまえる」ことが必要になる。この辺を寓話的に説明するのは手練の川添節。

理論的に未解決でも大量のデータを食べているうちに、人工知能がとにかく実用に困らない程度にそれっぽい回答を出せるようになってきたことはいまや皆知っている。
それでも「『この課題をクリアしていない限り、言葉を理解しているとは言えない』という、『言語学者から見て絶対に譲れないライン』は提示したつもりです」(あとがきより)。
このかっこよさ。

押し付けるつもりは毛頭ないけれど、娘がこれを読んでおもしろい!と思ってくれるかどうか。ちょっと楽しみ。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: サイエンス
感想投稿日 : 2023年11月12日
読了日 : 2023年11月12日
本棚登録日 : 2023年11月12日

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コメント 1件

本ぶらさんのコメント
2023/12/05

ご無沙汰してます。

>語学そのものが好きなことはAIの本質理解の上で立派な武器
そう。それは自分も思いました。
パソコンもネットも人より全然遅れて手を出したITオンチwなんですけど、AIはミョーに興味があって、面白いんですよね。
それは、AIは理系よりも、むしろ文系の方が活躍の可能性のある分野だって気がするからなんです。

ただ、自分は文系といっても、naosunayaさんの娘さんと違って文法の勉強は苦手だったんで(^^ゞ
その点でAI方面には向かないかもしれませんけど、でも、娘さんがそういう資質を持っているなら、それは社会に出てから楽しみですよ。
ていうか、娘さん自身が社会に出てから楽しめるんじゃないですかね。

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