高齢化と人口減少。
社会保障と国家財政の破綻。
若者軽視の政策の是正。
成長至上の資本主義の見直しと地域社会。
こうした私個人としても、そして全社会的にも重大な関心事がひとつの円環の中で議論される。
一つ一つの議論が圧倒的に新しい、ということはないけれども、これら総体へのソリューションを「人口減少社会のデザイン」と名付けたことはまさに秀逸だと思う。
とくに、成長がすべてを解決できた時代の成功体験にしがみつき、本来今の世代の中で解決すべき社会保障問題を未来の子どもたちへの借金として押し付けていることに対して、ある意味完全自己責任で弱者のセイフティネットのない米国以上に無責任
、と断じていることには強い共感を覚える。
なお、成長一本槍を見直し、「今幸せか」を問うことは、ある意味死生観そのものを問うことでもある。人口成熟の現代は、思想のビックバンの可能性を秘めているとの第6章の議論はいささか試論的ではあるものの大変興味をそそられた。
私自身、例えば熊野古道や出羽三山など、これまでのいくつも聖地探訪登山をしてきた。
そしてその結果、明治維新に際して神仏習合を破壊したことは日本人の精神構造に大打撃を与えた、という仮説を抱いているのだが、本書の神仏儒を一体的に捉える感覚や、ある種アミニズム的に自然を精神世界の根底に位置づける著者の思考は、僭越ながらそれと何か一脈通じるようにも思えたのだ。
実務としての地域社会構築の取り組み含め、示唆に富む本。
読書状況:読み終わった
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- 感想投稿日 : 2022年7月24日
- 読了日 : 2022年7月24日
- 本棚登録日 : 2020年5月4日
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