それでも、日本人は「戦争」を選んだ

著者 :
  • 朝日出版社 (2009年7月29日発売)
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普段、東大で歴史の授業をしている著者が、高校生に日中戦争から、太平洋戦争までについて、資料に基づいて「授業」した内容の本。


大学の先生だけあって、幅広い知識をもとに、高校生にわかりやすく解説しています。

文体も授業形式になっているので、読みやすい。
もちろん、ある程度の予備知識があれば、なお読みやすいのではないかと。

最近、いろいろ思うところがあり、日本近現代史についての本を読もうと。

とある、ホームページで知ったこの本。
読んで良かった。


戦争に至るまでの背景、その後のこと。
各国の思惑。
いろいろな要因が絡まって、日本はずるずると戦争に至ってしまった・・・。

自分は、そんな印象。

印象に残ったのは、いろいろありますが。
当時、凶作で生活にあえいでいた農家。

本来なら、農家を救済する政策を打ち出すのが政党。
しかし、当時の政党はそういう政策を打ち出さずに、農家が望む政策を打ち出したのが、軍部・・・。

う~む。

そして、満州への移住政策。
不毛の大地。
誰も行こうとしない。

そこで、国や県は、村の道路整備・産業振興のために特別助成金、別途助成金を出す。
そのかわり、村ぐるみで移住すれば、という条件つきで。

助成がなければ、村営が厳しい村々が、結果的に移住する。
しかし、結果多くの犠牲者を生み出すことになる・・・。

中には、見識のある村長さんがいて、助成金で村人の命を安易に扱おうとする国・県のやり方を批判し、分村移民に反対する村長さんもいました。

大下条村の佐々木忠綱さ村長です。

満州からの引き揚げ。
「ソ連軍進行の過酷さ、開拓移民に通告することなく撤退した関東軍を批判しがち」だけれど、筆者は、「分村移民をすすめる際に国や県がなにをしたかということ」を思い出さなければならないと述べます。

「特別助成や別途助成という金で、分村移民創出を買おうとした施策は、やはり、大きな問題をはらんでいたというべきでしょう」。


まさに、そうだと思います。

この分村移民と助成金の仕組み。
今の原立地自治体と交付金の関係に通じるものがあります。


「あとがき」にもありますが、筆者の「結局のところ『あの戦争はなんだったのか』という問い」

自分もずっと考え、そういう本を読もうと思います。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 図書館で借りた本
感想投稿日 : 2013年9月7日
読了日 : 2013年9月7日
本棚登録日 : 2013年9月1日

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