アルベルチーヌが死んでしまった。
馬車から身体を投げ出されて木に激突とはあまりに惨たらしい最期ではないのか。
可哀想だ。
若くして亡くなった彼女への哀悼より同性愛疑惑の猜疑心に駆られている「私」の精神は発狂していると言っても過言ではない。
アンドレやエメ等の第三者を利用して真実を知ろうとするが結局真相には辿り着かない。
否、彼女の周囲が強固な壁を立てて近づけないようにしているとも考えられる。
「私」への因果応報とも取れるにしても、最後まで彼女の口から明かされなかった正体は、読者としても大変気掛かりな事である。
その後彼女の優しさや愛情(と受け取れる仕草)を懐古している「私」と同時に、読者側のこちらにもより一層彼女の喪失感が迫ってくるのである。
特に「私」が寒くないように首元を隠してあげた一節には胸が詰まった。
ジルベルトと再会したことで彼女を忘却しようとするが、やはり絵画を眺める裡にアルベルチーヌを思い出さずにはいられない。
自然な過去への回顧に共感した。
ジルベルトとサン=ルー等の結婚の件は唐突な印象を拭えない。
著者が本当に描きたかった物語はどのような結末だったのか、知りたくても絶対に不可能だが気になる。
読書状況:読み終わった
公開設定:公開
カテゴリ:
未設定
- 感想投稿日 : 2018年12月13日
- 読了日 : 2018年12月13日
- 本棚登録日 : 2018年12月12日
みんなの感想をみる