ビジネスモデル2025

著者 :
  • ソシム (2015年9月28日発売)
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3

ざっと読んでまとめた。
整理としては参考になる部分も多かったが、見通しの甘い部分も多々あり注意が必要。
今後何かで網羅的な整理が必要になったとき、補完的に見直したい。


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以下メモ:


■背景

・ビッグバンディスラプション
 →トライアルユーザが登場し、次にバーストマジョリティが巨大な並みとなって一気に市場を席捲、
  その後はスピーディに減少・衰退
 →例:Kinect


■コストゼロ社会

・取引コストがゼロになる5つの理由
 -デバイス(スマートデバイスによりいつでも情報空間にアクセス)
 -デザイン/UI(スマフォアプリ)
 -GPS/リアルタイム
 -IoT
 -SNS(取引のインフラとして機能)

・共有経済が日本にも広がる土壌は十分にある
 →「身近な他者集団からの評価」は共有経済を支える要素そのものであるところ、
  日本人にとって「世間の目」は西洋における「神の目」として機能している

・スワップコマース
 →新たな物々交換トレンド
 →共時性、シンクロニシティ(意味のある偶然の一致、時間短縮)

・取引コストがゼロになるにしたがって、シンクロニシティをデザインするような高度なディレクションが
 テクノロジーの進化の道筋の中に確実に存在している

・共有経済圏のプラットフォームは自社利益に固執することができない
 →サービスを立ち上げるコストが比較的低く、限界コストが小さい代わりに参入障壁も限りなく低い

・取引コスト以外のコストも下がっていく
 -在庫コスト(クラウドファンディング)
 -設備投資コスト(コワーキングスペースやテクショップ)
 -物流コスト(3Dプリンタ、再定義された物流サービス)

・需要とコストは価格決定における小さな要因に過ぎなくなり、投資や利益の概念も変わる


■分散社会における大企業の役割

・基本的人権を守るインフラ
 →公共性が求められる(例:山梨県の雪害時におけるセブンイレブン)
・プラットフォームとしての企業
 →今後大企業はますますコラボレーションに価値を置くようになる

・大企業従業員の今後の仕事は大企業のシステムを守る「メンテナンス」
 →社内システムやビジネス全体のシステムを広義にメンテナンスする仕事
 ※知財はまさにこれ


■取引と信用

・詳細情報や信用を素早く流通処理させれば、抽象化された数字であるお金に依存しなくてよい
・もちろん貨幣経済が完全になくなることはなく、これからも交換の主流として存在し続ける

【信用の歴史】
・1000年頃 …市場経済の源流、信用を担保するものは市場という仲介者
・1800年代 …個人と企業との取引が広がり、法律や保険が整備され信用を強化
・1950年代 …世界共通の規制と各国政府・組合等の監視組織が互いに補完し合い信用確保
・現代 …SNSが「隣人」の概念を進化させ、信用を担保

・評価経済
 →注目と評価により生まれる非貨幣経済圏
 →評価経済圏の底流に流れる人と人との信頼感、信用そのものが、共有経済を支える
  重要な前提条件になっている


■ビジネスモデルのパラダイムシフト

・ビジネスにおける普遍とは「顧客に喜んでもらう」ことであり、利益はその対価であって目的ではない

・新たなビジネスモデルの例:
 -タイムバンク
 -無料コワーキングスペース「Seats2meet」
 -語学学習マッチングサービス「Meet2Talk」
 -善意のギフト経済の実験場「impossible.com」

【ビジネスモデルの構成要素の変化】
・重要指標
 →利益最大化 から 影響力最大化
・企業(人材と組織)
 →従業員 から クラウドソーシング
・提供モデルと流通
 →標準規格化 から 個別化
 →リアル&アウトソーシング から オンデマンド&クラウドシッピング
・マーケティング/顧客
 →買わせる・消費させる から 好きになる・生産させる
・利用モデル
 →所有 から共有
 →マーケットシェア から マインドシェア(可処分所得のシェア)

【利益より影響力(貢献価値最大化)が重要である理由】
・プロフィットパラダイムの終焉
 →企業の本質的価値が貨幣では測りにくくなる
 →企業は社会がその企業を潰すことができないところまでその影響力を極大化しようとする
・現在は社会とライフスタイルの変革期
 →現在はインフラ構築基、文化創造期である
・コストゼロ社会では収益化を急ぐ必要がない


■7つのビジネスモデル

・4つの経済(貨幣経済/共有経済/贈与経済/交換経済)を背景にした7つのビジネスモデル

1)ロボットの継続課金モデル
 →ハードウェア革命により重要に
 ※しかし「参入障壁が低くなっている」の例が失敗事業のPepparなので説得力ない…
  やはりすり合わせ技術は伝統的ノウハウが必要なのでは

【ハードウェア革命の波】
・従来課題であった「マーケットへの製品投入の遅れ」 がプロセス改革で解消される
・挑戦目標だったプロダクト開発全体のコスト把握が可能になる
・製品開発で最も重要な「開発・デザイン」に資本集中できる

2)モノのオープンプラットフォーム
 →「モノを作って販売する」という発想では継続的ビジネス展開は難しい
 →モノのオープンプラットフォームは参加者を増加させる
 ※具体的な価値筋の説明がなく抽象論のみ
 ※ロボットの件と併せて、ソフトの領域の人の発想だと思う

3)物流再構築モデル
 →リアルタイムマッチング配送、ドローン、3Dプリンタ

4)ネットワーク力による価値消費の最適化
 -ローカルマーケット再構築
  →Uberに負けじとAmazonもローカルマーケットへ進出しようとしており、ベビーシッターから
    便利屋まで、地域のサービスをAmazonで売れるようにしている
   ※結局スケールフリーネットワーク効果による勝者総取りになるだけでは…
  →ローカルマーケット再構築モデルでも、取引コストをいかに抑えるかが重要ポイントになる
 -共有経済の波がB2Bにも広がる

5)クラウドソーシング利用モデル
 →能力のインターネット
 →ディレクション(マッチング)がクラウドソーシングのカギ
  ※AIの得意領域
 →「仕事を単にマッチングする」段階から「仕事やプロジェクト・事業が創造される」段階へ
  ※そう簡単ではないと思う、システマティックにはできない

6)ボットソーシング利用モデル
 →クラウドソーシングの波の次はロボットへのアウトソーシング
  (例:WatsonのCognitive Cooking、ロゴやデザインの自動生成)
 →人間のデザイナやクリエイターやディレクションや詰めの作業、意思決定サポートなど高次領域へ

【これまで価値を生んできたもの】
・開墾の時代 →鉄、土地そのもの
・工業の時代 →上に建つ工場、オフィス
・ネット時代 →人

7)個人と地域を活かすニューサプライチェーン
 →地域の工場がモノづくりの工房として生かされる
 →ローカルモータースの事例
  …ネットコミュニティ「Forge」で車を設計・デザインし、購入時は地域のマイクロファクトリで組立て
  …米国法では製造の50%以上に消費者が関わる場合規制緩和(衝突試験免除など)
  ※なんだか法の抜け穴臭いというか、責任をユーザに転嫁しており、持続的モデルではなさそう
 →OpenDeskはデジタルデータを無料提供
 →Paperhousesは設計図を無料DLでき、地域施工業者が地域の健在で建てる
  ※設計と製造の分離はあり得る方向性だと思う
  ※もっともすり合わせができなくなるので、ハイエンドは従来モデルで残り続けるだろう


■哲学

・これからは科学的帰納法から仏教的演繹法へ
・阿頼耶識のうえ、阿磨耶識が人間とロボットとを区別する
 ※阿頼耶識は「履歴」に相当するので参考になる

※著者の哲学議論は、それっぽい用語を分かった風に並べてはいるものの、
 精神論・感情論でロジックが伴っておらず、聞く価値はない


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読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 本:全般
感想投稿日 : 2018年11月5日
読了日 : 2018年11月5日
本棚登録日 : 2018年11月5日

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