未来の年表2 人口減少日本であなたに起きること (講談社現代新書)

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  • 講談社 (2018年5月16日発売)
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『未来の年表』で述べた一般論を身近な出来事に具体化した内容となっている。
なので続編ではあるが特別新しいテーマを含んでいるわけではない。

15年前から進み始めた日本の少子高齢化に伴う人口減少で実感していることは多々ある。

児童や学生では、小中学校の統廃合さらに1学年のクラス数の減少が止まらない。
私が子供の頃お世話になった学研の「科学と学習」は廃刊になって10年、小学館の「小学〇年生」もどんどん廃刊になり今は「小学1年生」だけになってしまった。
今年はコロナの影響もあるが、高校野球の試合では合同チームも増えてきている。

会社では、オフィスの高齢化。
現在の労働力人口は40代が最も多く、あと5年もすると50代が最も多くなるだろう。
新入社員を採らない(採れない?)会社では、40代でも新人・若手の仕事をせざるを得ない。
社員の平均年齢が50歳以上という会社があっても特に珍しいと思わなくなってきている。
かつては55歳で定年し、2年程嘱託で働いて後は余生をのんびり過ごすのが常識という時代もあったが、これからはそうはいかない。

最近のニュースをいくつか挙げると、
・サミットストア、雇用年齢75歳までに引き上げ
・ノジマ、80歳まで働ける制度導入
・高年齢者雇用安定法改正「70歳雇用延長制度」2021年4月より適用
と、最低70歳までは働け!と言っているよう。
50代はまだまだ若造扱いだ。

鉄道やバスなどの公共交通機関も縮小している。
人が減って採算が合わないことが主要因だが、運転手の不足も深刻な要因となってきている。
運転手不足は公共交通機関だけの問題ではない。
宅配便や各種物流のトラックドライバーの不足は日々の生活への影響が大きい。
通販利用の拡大で運送業が悲鳴をあげているのは周知の事実だ。
これらの問題は、無人運転やドローンでは到底カバーできないだろう。

今現在コロナ患者の増加で病床数を増やそうとしているが、医師や看護師のマンパワー不足の問題で対応できず事態は逼迫している。
テクノロジーで解決できることは限られている。
近年は、台風、洪水、地震、噴火、津波、原発事故などで被害が多いが、人手不足が一番のネックで復旧が進まない。
体を使う職業をもっと優遇しないと今後の日本は回らないように思う。

その他、貧困・孤独老人による刑務所の介護施設化の懸念とか、10年後には空家率が30%になるとかの問題も見えてきている。

10年程前になるが、五木寛之の「下山の思想」が発行され本屋に並んでいるのを見た時、うまく日本社会が縮んでいく方法はないのか?と考え始めていた。
当時このような考えは"ネガティブ"思考として受け入れられず、まだまだ成長できる(しなくてはならない)という空気感に支配されていた。
本書では、「戦略的に縮む」ほど、"ポジティブ"な考えはないと著者が訴えており当然のことながら共感した。
実際に日本は30年近く経済成長は止まっているし、今後の成長戦略が見いだせないばかりか、なんとIT後進国に成り下がってしまった。

本書のあとがきでは、「逃げきり世代だ」と問題を先送りして自分ファーストの環境維持にしか興味のないオールド・ボーイズに苦言を呈している。
今どきの小学校では、(オールド・ボーイズは真面目に取り組んでいない)SDGsについて考える時間を設けたりしている。
最近はこういう問題に真剣に取り組もうとしている若者が増えてきていると感じ、おおいに期待している。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 政治・社会
感想投稿日 : 2020年7月27日
読了日 : 2020年7月27日
本棚登録日 : 2020年6月29日

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