([ほ]4-5)活版印刷三日月堂 空色の冊子 (ポプラ文庫 ほ 4-5)

  • ポプラ社 (2019年12月5日発売)
3.92
  • (68)
  • (128)
  • (75)
  • (8)
  • (0)
本棚登録 : 982
感想 : 94
4

まさかあると思っていなかった番外編の第一弾。なので本編を思い出しながらしみじみと読めました。
弓子さんが生まれる前、そして生まれてから母・祖父母、そして父を亡くして三日月堂に戻ってくるまでの出来事が7編。

1章は、弓子さん1歳の時の三日月堂で働く祖父の話。
2章は、弓子さんが生まれる前の母カナコさんと父修平の話。

3章は、1章の続き。母カナコさんが亡くなって三日月堂の祖父母の家に預けられていた弓子さん小学1年生最後の春休みの話。
2年生になるのを機に父のいる横浜に引っ越しすることになった最後の日、弓子さんは祖母と一緒にレターセットと卵焼きを作る。
レターセットは母カナコさんにお手紙を書くために使おうと思っている。
届かないかも知れないと不安を持っているようだがきっと届くよ。弓子さんの名前が"弓"であるのはそういう想いが込められているから。

4章は、弓子さんの母カナコの大学時代の友人裕美の話。
裕美が自殺しようとしたとき「生きていれば、きっといいこともあるよ」と言ってなぜかカナコが歌ってくれたのがひこうき雲。
20代で死んでしまったカナコの墓で裕美が思わず歌ってしまったのもひこうき雲。
辛い立場に追い詰められてしまっていた裕美だが、(生きていれば)いいこと、(これから)きっとある。

5章は、弓子さんが社会人で祖父が三日月堂を閉じる直前の話。かつてはそれなりに盛況で忙しかった和紙屋と活版印刷屋が時代に取り残されていくのが物悲しい。

6章は、本のサブタイトルがつけられた章。祖父が三日月堂を閉じた後の話。3.11地震が起き、かつて弓子さんが通っていた保育園の卒園記念の冊子を作ることに。
これからどうなるのかわからない、そんな時代を生きていかなければならない。地震の影響を乗り越えるべく「勇気を持って、元気に進もう」と冊子に印刷する。
これは地震が起きたからではなく、いつだって、そんな時代の繰り返しのような気がする。

7章は、弓子さん父までも亡くし、とうとう独りぼっちになってしまった頃の話。
横浜から川越に引っ越しをする前日、大学時代の友達と偶然会う。
希望に満ちた引っ越しではない、身近な親族が皆いなくなってしまったが、何とかして生きていくんだという気持ちでいっぱいの引っ越しだ。
弓子さんが川越で新しい生活を始める日、友人も自分の人生だからと新しい生きかたを決意し札幌に戻る。

さて、残すは本編で順調に仕事が回り始めた三日月堂の「未来」が描かれる番外編第二弾だ!
どんな未来が待っているのか楽しみ。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 小説 - 日本
感想投稿日 : 2020年6月20日
読了日 : 2020年6月20日
本棚登録日 : 2019年12月29日

みんなの感想をみる

コメント 0件

ツイートする