東吾の匂い
木版の匂い
インクの匂い
本の匂い
煙草の匂い
匂いの中で何故これほど惹かれ自尊心すら見失って
やみくもに身を投げ出してしまいそうになるのか。
底に渦巻くのは生と死、愛と芸術がとりまく。
小池小説の最高峰といってもいいかもしれない。
《文中より》
ふと、紗江は自分今の自分が柚木の側ではない、明らか
に東吾の側に東吾の世界にいると感じた。
紗江は柚木に「いとおしかった。いとおしくてならず、
立ち止まった石段の途中で紗江は胸の熱さに抗しきれな
くなって、思わず涙ぐんでしまうことすらあった。」
紗江は柚木と死以外の形で別れることはなかっただろう
断じてそれ以外の別れ方は考えられない。
読書状況:読み終わった
公開設定:公開
カテゴリ:
小池真理子
- 感想投稿日 : 2013年6月14日
- 読了日 : 2010年6月14日
- 本棚登録日 : 2010年6月14日
みんなの感想をみる