水の翼 (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社 (2004年4月24日発売)
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本棚登録 : 181
感想 : 28
3

東吾の匂い
 木版の匂い
 インクの匂い
 本の匂い
 煙草の匂い
匂いの中で何故これほど惹かれ自尊心すら見失って
やみくもに身を投げ出してしまいそうになるのか。
底に渦巻くのは生と死、愛と芸術がとりまく。
小池小説の最高峰といってもいいかもしれない。

《文中より》
ふと、紗江は自分今の自分が柚木の側ではない、明らか
に東吾の側に東吾の世界にいると感じた。
紗江は柚木に「いとおしかった。いとおしくてならず、
立ち止まった石段の途中で紗江は胸の熱さに抗しきれな
くなって、思わず涙ぐんでしまうことすらあった。」
紗江は柚木と死以外の形で別れることはなかっただろう
断じてそれ以外の別れ方は考えられない。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 小池真理子
感想投稿日 : 2013年6月14日
読了日 : 2010年6月14日
本棚登録日 : 2010年6月14日

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