元マッキンゼーのコンサルタントで、エンジェル投資家・起業家という顔も持ち、かつベストセラー作家でもある瀧本哲史さんの読書論及びブックガイド。
タイトルの意味するところは、著者の言葉をうのみにせず自らの頭と言葉で疑い、反証する中で考えを再構築する知的プロセスのこと。
そのエクササイズのために全く異なるアプローチの本を2冊ずつ選び、各章で対抗させながら解説していく。
上で「各章」と書いたが、格闘技よろしく本書ではRoundという単語を使用している。
Round 0 のイントロダクションは以下の2冊。
ショウペンハウエル「読書について」岩波文庫
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瀧本哲史「武器としての決断思考」星海社新書
Round12まであり、ビジネス書、学術書、小説、国語教科書掲載作品、児童書、漫画、絵本と非常に幅広い。
テーマは何か、なぜこの本なのか、どのような本なのか、対抗する本はどのような主張をしているか、両者を比較検討しながら考察していく過程が本書の読みどころ。
その論旨は実に明快で妥協がない。
受動的に読むのではなく著者の言葉を疑えと言われても、何をどう読めばいいのか、何を学べばいいのかが漠然としていることが多い。
本書は痛快なほど王道を行くタイプ。
この本でこれを学びますよ、異なる立場の本はこれですよと掲げ、解説の中でこちらの眠っている頭を幾度もknockしてくれる。
「なぜこの名著がベストセラーとなったのか」という時代背景にも触れており、そこがまた面白いと来る。
おかげでちょっとしたパンチドランカー状態だ。
瀧本さんの主張の全てに賛同できるわけではないが、取り上げられた本の中には興味をそそられるものが多い。また解説の中で印象に残る言葉にもたくさん出会った。
少し列挙してみよう。
「実は本当に仕事の効率を上げる方法は、やること自体を根本的に組み替え、努力を必要としない仕組みをつくることによって桁違いの結果を得ることだ」
「強みというのは市場と競合との関係で決まるものであって、自分の中だけでは決まらない」
「結局のところ、科学技術を突き詰めていけば、神への挑戦に近づいていかざるを得ない」
「本を読み終えた後、しばらくして、その内容を完全に忘れてしまい、その後の思考や行動の変化が何もなければ、それは、冒険に出て宝の山に入りながら手を空しくして帰るに等しい」
「教養について考えるのであれば、自分にとって読むべき本、読む必要のない本を判断することが教養と言えるだろう」
未読の本も多かったが、解説で良書であると分かる。
読書は格闘技だと言う著者の良書の定義はこうである。
「書いてあることに賛同できなくても、それが批判するに値するほどの、ひとつの立場として主張・根拠が伴っていれば、それは良書である」
読みだす前はもっとハードな内容を想像していたが、思いのほか読みやすかった。
そして大変な刺激を受けた。
これまで読んできた本のどれとどれを対抗させることができるのか。
今の私にはそのスキルはないが、自分の頭で考えるという習慣を持って読み続けたい。
可能であれば未読本を読破して著者と感想戦を闘いたいところ。
が、すでに泉下の人となられたのが残念でならない。
- 感想投稿日 : 2020年10月7日
- 読了日 : 2020年10月7日
- 本棚登録日 : 2020年10月7日
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