体調が優れず軽読書が続いている。
この本も「おそるおそる」開いたものだ。
アスペクト文庫の「作家の本棚」がビジュアル的に美しかったこともあり、文章で語る本棚というものに気乗りしなかったせいもある。
ところが、目からウロコの面白さ。声を上げて笑う箇所あり、時に切なくもなり。
23人の作家さんたちが書いた本棚エッセイと聞くと、皆さんは何を想像されるだろう。
蔵書の収納と積読本の始末、それらの悲喜こもごもの苦労談だろうか。
いやいや、そこはプロですから。こちらの想像のもうはるか上を行くんである。
度肝を抜くスケールの話は鹿島茂さん。
そのタイトルは「愛人に少し稼いでもらう」。
古書を買うお金を稼ぐため、いつしか山のような借金を抱えることになる。
加えて、蔵書空間を遍歴することにも。
そうしてたどり着いた先は「愛人に稼いでもらう」というただならぬ結末だ。
「さんざん苦しめられてきた古書には自分自身で稼いでもらおう。ひと言で言えば、古書の独立行政法人化である。愛するあまり憎しみが募ってきていた愛人が自分のマンション代くらい自分で稼ぐと言いだしたようなものである」
重厚な書斎イメージが欲しいという人にレンタルしているというこのスペースの、何と豪華なこと。問い合わせ先まで載っている。
一点ものの貴重な写本を、なんとしても火災から守りたい一心で、「キッチンに壁紙を張りたい」という奥様を新婚早々泣かせた磯田道史さん。
赤川次郎さんは、書店員だった頃の話がそれは切ない。
両サイドに新設した本棚の一番奥に仏壇を置いたという、赤瀬川源平さん。
約2万冊という蔵書から目当ての本を探すのに10日かかるという、農学博士の小泉武夫さん。
少女小説で育った内田樹さんは「ほとんどものを考えない」少年小説がどうしても好きになれずにいた。ところがケストナーの「飛ぶ教室」で初めて、「内面を持つ少年」に出会ったという件があり思わずガッツポーズをした私。
井上ひさしさんの「本の力」も、情けなくも失笑がもれる。
「本はふしぎだ。まるで生き物のように、まわりの人間たちの思惑なぞかまわずに、自分で自分の運命を切り拓く力を持っている」・・さて、それはどんな運命だったか、読んでみてね。
ちなみに井上さんのエッセイの初めは、本で床が抜ける場面から。本当にあるのね、それ。
好み優先で読むという手法をとったので、始めは酒井駒子さんから。
次は荒井良二さん→児玉清さん→祖父江慎さんという順だった。
モノクロだが、作家さん自身が撮った本棚写真もある。
小野不由美さん、椎名誠さん、赤川次郎さん、赤瀬川源平さん、児玉清さん、
南伸坊さん、井上ひさしさん、荒井良二さん、唐沢俊一さん、内澤旬子さん、
西川美和さん、都築響一さん、中野翠さん、小泉武夫さん、内田樹さん、
金子國義さん、池上彰さん、田部井淳子さん、祖父江慎さん、鹿島茂さん、
磯田道史さん、酒井駒子さん、福岡伸一さん。
以上23人。さて、どこから読まれますか?
- 感想投稿日 : 2020年6月1日
- 読了日 : 2020年6月1日
- 本棚登録日 : 2020年6月1日
みんなの感想をみる