私の本棚 (新潮文庫)

制作 : 新潮社 
  • 新潮社 (2016年1月28日発売)
3.49
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本棚登録 : 802
感想 : 55
4

体調が優れず軽読書が続いている。
この本も「おそるおそる」開いたものだ。
アスペクト文庫の「作家の本棚」がビジュアル的に美しかったこともあり、文章で語る本棚というものに気乗りしなかったせいもある。
ところが、目からウロコの面白さ。声を上げて笑う箇所あり、時に切なくもなり。

23人の作家さんたちが書いた本棚エッセイと聞くと、皆さんは何を想像されるだろう。
蔵書の収納と積読本の始末、それらの悲喜こもごもの苦労談だろうか。
いやいや、そこはプロですから。こちらの想像のもうはるか上を行くんである。
度肝を抜くスケールの話は鹿島茂さん。
そのタイトルは「愛人に少し稼いでもらう」。
古書を買うお金を稼ぐため、いつしか山のような借金を抱えることになる。
加えて、蔵書空間を遍歴することにも。
そうしてたどり着いた先は「愛人に稼いでもらう」というただならぬ結末だ。
「さんざん苦しめられてきた古書には自分自身で稼いでもらおう。ひと言で言えば、古書の独立行政法人化である。愛するあまり憎しみが募ってきていた愛人が自分のマンション代くらい自分で稼ぐと言いだしたようなものである」
重厚な書斎イメージが欲しいという人にレンタルしているというこのスペースの、何と豪華なこと。問い合わせ先まで載っている。

一点ものの貴重な写本を、なんとしても火災から守りたい一心で、「キッチンに壁紙を張りたい」という奥様を新婚早々泣かせた磯田道史さん。
赤川次郎さんは、書店員だった頃の話がそれは切ない。
両サイドに新設した本棚の一番奥に仏壇を置いたという、赤瀬川源平さん。
約2万冊という蔵書から目当ての本を探すのに10日かかるという、農学博士の小泉武夫さん。
少女小説で育った内田樹さんは「ほとんどものを考えない」少年小説がどうしても好きになれずにいた。ところがケストナーの「飛ぶ教室」で初めて、「内面を持つ少年」に出会ったという件があり思わずガッツポーズをした私。

井上ひさしさんの「本の力」も、情けなくも失笑がもれる。
「本はふしぎだ。まるで生き物のように、まわりの人間たちの思惑なぞかまわずに、自分で自分の運命を切り拓く力を持っている」・・さて、それはどんな運命だったか、読んでみてね。
ちなみに井上さんのエッセイの初めは、本で床が抜ける場面から。本当にあるのね、それ。
好み優先で読むという手法をとったので、始めは酒井駒子さんから。
次は荒井良二さん→児玉清さん→祖父江慎さんという順だった。
モノクロだが、作家さん自身が撮った本棚写真もある。

小野不由美さん、椎名誠さん、赤川次郎さん、赤瀬川源平さん、児玉清さん、
南伸坊さん、井上ひさしさん、荒井良二さん、唐沢俊一さん、内澤旬子さん、
西川美和さん、都築響一さん、中野翠さん、小泉武夫さん、内田樹さん、
金子國義さん、池上彰さん、田部井淳子さん、祖父江慎さん、鹿島茂さん、
磯田道史さん、酒井駒子さん、福岡伸一さん。    
以上23人。さて、どこから読まれますか?

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 本にまつわる本
感想投稿日 : 2020年6月1日
読了日 : 2020年6月1日
本棚登録日 : 2020年6月1日

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コメント 13件

naonaonao16gさんのコメント
2020/06/01

nejidonさん、こんばんは!

いつもいいねありがとうございます!
体調大丈夫ですか?心配でコメントさせていただきました。
お大事にしてくださいね…(-人-)

わたしは児玉清さんから読みたいです☆彡.。

5552さんのコメント
2020/06/01

nejidonさん、こんばんは!
今、こちらのレビューを拝読していたら、つけっぱなしにしていたテレビから聞いたことがある声が、、、何と歴史学者の磯田道史さんが出演されてしゃべってらっしゃる!
あまりの偶然にビックリしました。
今、読んでたよ!と。

赤川次郎さんは書店員だったのですねー。
知らなかったです。
私、実は昔、『赤川次郎ファンクラブ』に入っていたんですよ。
会報にイラストを載せていただいたり、サイン本が当たったり、文通募集コーナーでペンパル(懐かしい響き)ができたりしました。

勝手にこの本に運命感じちゃったので(←笑)探して読んでみようと思います。

毎回毎回興味をそそられるレビューをありがとうございます。

夜型さんのコメント
2020/06/02

いつもたいへんありがとうございます。

大丈夫ですか。
僕はこの頃は健康を取り戻しつつありましたが、今度はnejidonさんがお体が優れなくなってしまいましたか。。
しかしながらそれでも本を読む手を止めず、筆を執られる姿に敬服いたします。

そろそろ暑くなりだしましたからくれぐれもご自愛くださいね。
順序についてですが、僕なら、
井上ひさし→赤川次郎→児玉清 でしょうか。

地球っこさんのコメント
2020/06/02

nejidonさん、おはようございます。
お体の方は大丈夫ですか。
6月に入って急に暑くなってきました。
ご無理されませんように。
読みたい順番は、
わたしは「十二国記」にはまっちゃいましたので、やはり小野不由美さんからですね!
そして中学生の頃、ミステリ小説を読む楽しみを教えてもらった赤川次郎さんかな。

nejidonさんのコメント
2020/06/02

naonaonao16gさん、こんにちは(^^♪
こちらこそ、いつもいいねを下さってありがとうございます。
小説をほとんど読まないので、naonaonao16gさんのお好きな本がなかなか登場しなくてごめんなさいね。
そして、今回はご心配をおかけしてすみません。
もともと病気だらけの身体なのです(^^;
気持ちだけは明るいので、それを苦にすることもあまりないのですが、
今回はいささか凹んでいます。もう、横になってばかりです。
今日は週イチの通院日でした。。。

児玉清さん、いいですよね!短いエッセイでも情熱が伝わります。
ぜひnaonaonao16gさんもお読みくださいませ♡

nejidonさんのコメント
2020/06/02

5552さん、こんにちは(^^♪ コメントありがとうございます!
おお!何と面白い偶然でしょうね。
そうそう、そういう時は私も話しかけてしまいます。
今、あなたを読んでたよ、どうして知ってるの(笑)?って。

赤川次郎さんは、この本の中では少し異色です。
本棚の思い出が書店員として働いていた頃の思い出と重なり、その後読書の思い出へと移ります。
この本の中で一番心に沁みる一編です。
わずか3カ月ほどの書店員時代ですが、赤川少年の孤独と辛さが伝わって来て私も泣きました。
ファンの方ならなおさらでしょう。
あまり言うと読む楽しみがなくなってしまうのでここまでにしますね。
5552さんもぜひぜひお読みになれますように!

nejidonさんのコメント
2020/06/02

夜型さん、こんにちは(^^♪ コメントありがとうございます!
ご心配をおかけしてしまい、本当にすみません。
夜型さんが健康体を取り戻しつつあるというのは、すごく嬉しいニュースです!
あのレビューにあった食事法が、きっと合っているのですね。
どうかそれを維持されますように。
私の方は、まぁ仕方がないのです。元々ですから。
でも気持ちだけはいつも明るいのですよ。愚痴は嫌いですし。
それでも今回は横になってばかりの毎日です。
日にちクスリで耐えるしかありません。

ところでその読み順は素敵ですね。
赤川さんは↑↑5552さんへのお返事にも書きましたが、一番心に沁みて来ます。
その一編だけでレビューを書きたいくらいです。
井上ひさしさんは、善意の行為が思わぬ理不尽な結果を招くのですが、
そこは作家さんですから面白く書いています。
機会を捉えてぜひ夜型さんもお読みになれますように!

nejidonさんのコメント
2020/06/02

地球っこさん、こんにちは(^^♪ コメントありがとうございます!
ご心配をおかけしてしまい、申し訳ないことです。
はい、無理はしないし、そもそも無理は出来ないのです。
今日は週イチの通院日でしたが、毎日ぐったりと横になってばかりです。
この本も、ほぼ寝たきりで読みました・笑
季節の変わり目ですね。地球っこさんもお気を付けくださいね。

ふふ、読み順は、きっとそう言われると思いました!
小野不由美さんは整然とした文章を書かれる方ですね。
本棚の写真も載っていますが、こちらも相当きちんとしてます。
でも本棚の中身が整然としないことに、ご本人は悩んでいます・笑
赤川次郎さんは、↑↑おふたりのお返事にも書きましたが、一番心に沁みる文章です。
18歳の赤川少年の孤独を思い、私ももらい泣きしました。
言葉に出来ない思いをいくつもいくつも抱えて、ひとは生き抜くのですね。
それを思いやる人間でいたいものです。

naonaonao16gさんのコメント
2020/06/03

nejidonさん

体調の優れない中、お返事ありがとうございました。
小説をあまり読まれないこと、全然謝らないでください!わたしは読むものが偏りすぎてしまっていて、いつも参考にさせていただいております!!

通院、お疲れさまでした。
かなりお疲れになったのではと想像しております。ゆっくり休めてるといいなあ…
気持ちが明るいというのは素晴らしいですね!わたしはすぐに落ち込み、一喜一憂、ジェットコースターのような感情の持ち主です(笑)なので羨ましいです!

昨日、わたしが挙げたレビューに一番にいいねをくださってとても嬉しかったです^^
身体を第一に、これからもよろしくお願いします!返信は不要です。お大事にしてくださいね(´▽`)

佐藤史緒さんのコメント
2020/06/06

nejidonさん、おはようございます。
通院おつかれさまでした。
私は診る側なので週イチの通院と伺うと、超急性期ではないけど安定期ではないな…と愚考してしまいます。
どうぞご自愛くださいませ。

さて、いつも楽しいレビューありがとうございます♪
私は鹿島茂さんの本棚がとっても気になります。愛人に稼いでもらう発想、いいですね(笑)
内田樹さんの「少年小説はものをかんがえない」にも吹き出しちゃいました。

nejidonさんのレビューもコメントもとても楽しみにしておりますが、他のブク友さんも仰るとおり身体が第一、調子が優れないときは遠慮なく既読スルーして下さいね。
なんなら年単位で気長~に待ちますので(笑)
どうぞお大事に!

nejidonさんのコメント
2020/06/06

佐藤史緒さん、こんにちは(^^♪ コメントありがとうございます!
はい、言われる通り「超急性期ではないけど安定期ではない」時期です。
急性期が来ないように、今が大事なわけです。
年単位でお待ちいただけるなんて、うれし泣きですよぉ。。
調整が難しくてね、動けるうちに少しでも何かしておかなくちゃという気持ちと、相反する気持ちがあります。
どうかそのあたりをご理解くださいませ。
でも佐藤史緒さんのアドバイス、しっかり記憶しておきますね。

内田樹さんの言葉は、少年小説に抱いていた違和感を見事に言い表していて、私も吹きました(^^;
「ハックルベリー・フィンなんかに対しては、もう少しためらうといったことをキミはしてもよろしいのではないかという不満を抱いていた」というのです。笑えます。
ケストナー信者の私には、本当に嬉しい記述でした。
鹿島茂さんの本棚も、ぜひのぞいてくださいませ!
それから、遅咲きのブルーベルが今朝開花しました。
手間いらずのわりに綺麗に咲くので大のお気に入りです。
お仕事、どうか無理なさいませんように。そうもいかないことだらけでしょうが。。

佐藤史緒さんのコメント
2020/06/06

やはりそうですか、そして治療と生活のペース配分については、こればかりは当人でないと分からないところですよね。
ですが、くれぐれもご無理なさらぬよう…
あとお気遣いありがとうございます、私はいま申し訳ないくらいゆる〜い働き方しかしてないので気遣われると返って恐縮なのですが、それでも嬉しく思います。

さて、ハックルベリー・フィンについては本当にその通り!
トム・ソーヤーなどは今なら間違いなくADHDと診断されそうです。
それに比べて「飛ぶ教室」は、ライトなBL小説なんじゃなかろうかと思うくらい心理描写が細やかですよね。
私も好きな作品です。

ブルーベル開花したんですね!羨ましい限りです(*゚▽゚*)♡
ウチにも植えてみようかしら…

nejidonさんのコメント
2020/06/07

佐藤史緒さん、再訪して下さってありがとうございます(^^♪
ブルーベルは本当に手間のかからない良い子なんですよ。ぜひぜひ!
我が家は大きな鉢で育てています。
今庭を占領しているのは、紫陽花とホタルブクロ(白と青と紫)。
このホタルブクロが大層可愛くて(^^;
ベル状の花の中に蛍を入れて子どもたちが遊んだというのが語源らしいのですが、そんな子どもがいるなら会ってみたいですよねぇ。

トム・ソーヤーのADHD疑惑はまさしくその通り!
児童書小説も時代とともに見方が変わりますね。その意味でもケストナーは素晴らしいです。BLですか?だははは。
今回のコロナ禍は、感染症というものに対していかに無防備で生きてきたかを考えさせられました。。

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