レビュー数が意外にも多くて戸惑っている。
立花隆と佐藤優。このふたりの「必読の教養書400冊」に、そんなに興味のある方がいるとは思いもしなかった。何せハードルが高い。「打ちのめされるようなすごい」選書だ・笑
研究者、もしくは教鞭をとる側の立場だったら必要性が高いだろう。
もちろん、教養は無いよりはあった方がはるかに良いのは周知のことだが。
ブックリストはふたつに分かれ、1は知的欲望に満ちた社会人へ「書斎の本棚から200冊」。
2はすぐ役に立つ‣すぐ買える「文庫&新書200冊」。
選書の理由が対談の中で語られているものも多い。
何を読むべきか、どう考えるべきかを、科学・心理学・古典・数学・哲学・歴史・政治・文学・宗教・・それは幅広い分野から選び抜いている。
で、最初にああは言ったものの、よくよく見ていくと「!」という書名も多い。
「夜叉が池・天守物語(泉鏡花)」「アーサー王物語」「はてしない物語(エンデ)」「風の谷のナウシカ」「負け犬の遠吠え」「国家の品格」「武士の家計簿」「断る力(勝間和代)」・・
比較的よく読まれる本も多いことに、ほんの少し安堵した。ほんの少しだけ、ね。
チェーホフや団鬼六まで入っていて、やや文系に偏った印象。
「教養」という視点から読んだことはないので、ある意味新鮮だ。
佐藤さんは、危険なほど戦争関連が多い。正しく知っておけということか。
ただ、何冊か読みたい本はあった。
「俺の話を聞きなさい」タイプがふたりでは、対談にはならないのではと杞憂していたが、面白いのはむしろこの部分で、互いの教養をひたすら掘り下げていく話の、魅力の尽きないこと。
たくさんの発見もここにある。
そして、ふたりの考えは必ずしも一致しないのだ。
「僕はそうは思いません」等のフレーズが出てくると嬉しくてワクワクしてくる。
「知の巨人」だの「知の怪物」だのと呼ばれているふたりが全て同じ見解では、読み手はたちまち「ご馳走様」だもの。
これは、著名なひとたちの話でも妄信は禁物という教訓にもなる。
ちょっと笑ってしまったのは「教養」の定義がふたりで違っていたこと。
さて、皆さんなら「教養」って何だと思います?
以下、特に印象に残った箇所。
『狂った政治思想はみなユートピア思想から生まれている。
政治の基本は、ユートピアなんてものはないし、つくろうとすれば逆ユートピアを生むだけだったという歴史の現実を直視するレアリズムの認識から出発すべきです』
‣・第一章「読書が人間の脳を発達させた」より
『大学の教養課程でも「暗黒社会論」「悪の現象学」的なコースを設けるべき。
悪徳政治家、悪徳企業のウソを見破る技法、メディアに騙されない技法を教えることが現代の教養には欠かせません』・・第三章「ニセものに騙されないために」より
第五章の「立花隆による実践に役立つ14カ条」が、箇条書きで分かり易い。
「金を惜しまず本を買え。本は高くなったと言われるが、基本的に本は安い」
「選択の失敗を恐れるな。失敗なしには、選択能力が身につかない」
そして一番笑った箇所。
「自分の水準に合わないものは無理して読むな。水準が低すぎるものも、水準が高すぎるものも、読むだけ時間のムダである」
だそうです。
気になった箇所から拾い読みしながら、長く楽しめる本。
- 感想投稿日 : 2020年4月7日
- 読了日 : 2020年4月7日
- 本棚登録日 : 2020年4月7日
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