「あるひ、としょかんに ライオンが はいってきました。
かしだしカウンターのよこをとおり、ずんずんあるいていきます」
こんな風に始まるお話。
もしも、もしも、本当にライオンが入ってきたらどうする?
それはもう怖くて大騒ぎだろう。このお話の中でもみんなそう。
でもメリウェザー館長だけは堂々たるもの。
「そのライオンは としょかんのきまりを まもらないんですか?」
(いえ、べつに・・と答えた司書のマグビーさんに対して)
「それなら そのままにしておきなさい」
そう、このライオンさんは、見た目が怖いというだけで、図書館に入る誰もが持っていなければならない大切なものを持っていた。それは、図書館を愛する心。
字なんて読めないのに、本を愛する心をたっぷり持っていたの!
さぁそれからは、メリウェザーさんのお手伝いをし、子どもたちに交じってお話会にも参加して大の人気者に。ある日、メリウェザーさんが倒れるまではね。
マグビーさんにこの危機を知らせようと大急ぎで走って、大きな大きな声で吠えた。
だってライオンさんにはそれしか方法がないもの。
マグビーさんはとうとう怒った。
「しずかにしなきゃ いけないんだぞ!きまりをまもってないじゃ ないか!」
うなだれて出ていくライオンさんの後ろ姿に、お子たちは何を思うだろう。
決まりを守るのと、命を守るのと、どっちが大事?
「よき市民」であることを求められる図書館では、規則の方が大事なの?
世界で最も有名な図書館のひとつ、ニューヨーク公共図書館の入り口には、2頭の大きなライオンの石像がある。それぞれ象徴するのは「Patience(忍耐)」と「Fortitude(不屈の精神)」。
怖そうだけど、本当はみんながやってくるのを待っている。
さて、お話のライオンさんはどうなったかというと…
大丈夫。ちゃーんと戻ってくる。
子どもたちの嬉しそうなこと!
メリウェザーさんは、ライオンさんの首に抱きついて喜んでいる。
「たまには ちゃんとしたわけがあって きまりがまもれないことだって あるんです
いくら としょかんのきまりでもね」
図書館という空間が、どうして私たちになくてはならない場所か、思い出させる逸品。
表紙のライオンさんが優しそうに微笑んでいる。
お話のラストでは、入り口のライオン像も微笑んでいる。
読み聞かせると約15分。
高学年以上にとあるが、おうちで読んであげれば小さな子でもOK。
ライオンさんに寄りかかるように、ゆったりとした気持ちでどうぞ。
- 感想投稿日 : 2021年2月2日
- 読了日 : 2021年2月1日
- 本棚登録日 : 2021年2月2日
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