装幀も内容も豪華そのものの図鑑。
選ばれた100冊は、本の発展においてターニングポイントになった本たち。
そのジャンルも、宗教・科学・数学・天文学・医学・犯罪・児童書・旅行・ファッションと実に多彩。初めて知る本も多数あり、人類の知の歴史にひたすら圧倒される。
見開き2ページでひとつの情報が載せられ、テキストも大変多い。
全部で300以上もの図版があり、どれも貴重な歴史的コレクションだ。
各章の始めには地図と参照ページの小見出しがあるので、そこから辿ることも出来る。
世界各地(もちろん日本も)から、様々な文化や時代と本とがどう繋がってきたかを、詳しく述べている。文章は大変分かり易い。
文字がまだ発明されない旧石器時代の洞窟壁画からスタートする。
最古の大量印刷は日本で行われたらしく、770年頃の「百万塔陀羅尼」。
表紙絵の一番左にあるのがそれで、高さ20センチほどの小型の木製仏塔に仏教の経典がおさめられていたという。ヤシの葉、骨、竹、樹皮、紙が生まれる以前から、人々は情報を記録してきたことが分かる。
イソップ寓話集の11世紀の写本、非常に美しい「ケルズの書」、船乗りのための「島々の書」、源氏物語絵巻(元は137mもあったとか!)グーテンベルグの「42行聖書」、ヴェネチアの最古の科学テクスト、イスラムで生まれた世界最初の解剖図表集、児童書の草分け、点字本の始まり、世界初の写真集、最も偉大な地下出版書、最初の旅行ガイドブック・・
膨大な量の知識が脳内に入り込み、本の歴史は人類の文化の歴史とイコールなのだと、知ることになる。
それぞれの時代で革新を重ねてきた本の数々。
最終章の「デジタル化と本の未来」では、手塚治虫さんの「鉄腕アトム」が紹介される。
そして「本とはいったい何なのか」と問いかけ、紙の本はこれからも作られ続けるだろうと結んでいる。巻末に「用語集」と索引、大量の参考文献も載せられている。
時間の許す限りゆっくりと読んでいきたい一冊。
図鑑を見る(読む)楽しさを久々に堪能した。
出来るなら買って手元に置きたい。
この本に載せられた、現存する貴重な資料が末長く保存されますように。
- 感想投稿日 : 2020年5月25日
- 読了日 : 2020年5月24日
- 本棚登録日 : 2020年5月25日
みんなの感想をみる