絵とき ゾウの時間とネズミの時間 (たくさんのふしぎ傑作集)

著者 :
  • 福音館書店 (1994年4月15日発売)
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感想 : 63
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動物生理学を専門とする本川達雄さんの、92年に出た新書版の絵本バージョン。
新書版の方は93年に講談社出版文化賞受賞。
こちらの科学絵本では、あべ弘士さんのおおらかでユーモアたっぷりの絵が描かれている。

あまりの面白さに、どうして最初に新書版で読まなかったかと猛省中。
ロングセラーの理由は、最初の見開きページでぐっと引き込まれるのですぐに分かる。

『ガリバーが小人国に流れついた。
  すさまじく大きな人間じゃ。なに、背たけがわしの12倍もあるのか。
  さぞかしたくさん食べるのであろう。12倍食べるのじゃろうか? 』

ここから博士たちが計算していく。しかし、そもそも何を基準に計算していくのか。
体重?表面積? ・・・正解が提示されているが、そこまでの導き方が面白い!
小さなネズミから大きなゾウまでの、体重と食事量の関係、体重と体重1キロあたりの食事量の関係、更にすすんで体重と時間の関係。
体重が増えるにつれて時間がゆっくりになるという事実。
この場合の時間というのは、1回呼吸する時間のことであり、心臓が1回打つ時間のこと。
一生の間に心臓が打つ回数は、短命のネズミも長命のゾウも、みな同じ15億回だという。
焦ってせかせか生きても、ゆったりおおらかに生きても、命の時間がみな同じだとはね。

すべての哺乳類にこの原則は当てはまるらしく、例外中の例外はナマケモノ。
心拍数も呼吸数もずっとゆっくりで、使うエネルギーも少ないらしい。
それで、同じ大きさの他の生き物に比べて寿命が1,5倍も長いのだという。
本川さんはこのナマケモノが大好きで、末尾の見返しの部分にご本人の作詞作曲による「ナマケモノのうた」が掲載されている。
「へええ!」「へええ!」と何度も感心した後で、「ぼくのなまえは ナマケモノーー♪」と歌って楽しむ作りだ。生物学の、とっても楽しい入門書。
(そう言えばしろくまカフェでもナマケモノさんは本当にゆっくりゆっくりだったわ)

ところで、この本を読み聞かせに使われたことのある方に質問。
小文字のテキスト部分、計算式の部分も読みましたか?
もしこのレビューが目にとまったら教えてくださいね。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 絵本・通年
感想投稿日 : 2018年2月16日
読了日 : 2018年2月13日
本棚登録日 : 2018年2月16日

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