文学はおいしい。

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  • 作品社 (2018年9月20日発売)
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感想 : 12
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食べ物や飲み物が作品の中心に出てくる小説・エッセイ、詩、短歌、俳句などの紹介100選。
目次を見るだけでたくさんあってまぁビックリ。
作品に登場する意味や、日本にいつ頃からあったのか、どの時代に伝来したのか、ルーツや歴史まで触れている。食べ物という側面から文学作品を知るという、ちょっと面白い企画だ。

共同通信社配信企画として全国新聞に連載していたものをまとめたもので、書き手の小山さんは編集・論説委員さん。
どの作品にもハルノ宵子さんの挿絵が描かれていて、実際に作って描いたかのような、美味しそうな絵ばかり。
妹さんの吉本ばななさんがトップに登場して、大ラスはお父様の吉本隆明さん。
どうやらお料理好きなご家族だったらしい。

有名なところは、漱石の羊羹大好きの話(草枕)、森鴎外の饅頭のお茶漬け(森茉莉 記憶の糸)、宮沢賢治のトマト(黄色いトマト)、太宰治のトンカツ(グッド・バイ)、角田光代の素麺(八日目の蝉)、佐藤春夫の秋刀魚(秋刀魚の歌)などだろうか。
中3の国語に登場する三浦哲郎の海老フライ(盆土産)もある。
どんな場面で出てくるか、それがどんな効果を出しているかも説明されている。
「物語の旅」のレビューの冒頭に書いた阿佐田哲也が、本名の色川武代で銀シャリの山盛りを食べている。たいそうな大食漢だったようだ。

ブク友さんにファンの多い池波正太郎の「根深汁」は、レシピまで載っている。
剣客商売の秋山親子や鬼平の長谷川平蔵もこれが好きだったという素朴な料理だ。
要は「ネギのお味噌汁」のことで、日本書紀にもネギは記載されているらしい。
池波さんの作品のファンの方、登場人物になりきって(笑)作ってみてはいかが?

一番印象的なのは吉本隆明さんのネギ弁当(わたしが料理を作るとき)だ。
職なし・金なし・着の身着のままで奥様と暮らし始めた頃の、四畳半での思い出のご飯。
「美味しく、ひっそりとして、その頃は愉しかった」と書いている。目に見えるようだ。
そんな吉本家推薦の焼き蓮根が出てくる(開店休業 親子共著)。
焼き網の上で蓮根をひと節ずつ芯に火が通るほど焼く。
湯気が立っているうちに薄く輪切りにして、お醤油を垂らしてご飯のお供にする。
これは私もやるけど、すごく美味しい。ついでに長芋でも美味しい。お薦め。

食文化の歴史はその時代の影響をモロに受けるものだが、やはり思い出の味は生涯忘れないものだ。私は何だろう。読み終えてから考えている。
まさに[文学はおいしい]のだ。お好きな作家さんの作品から、食べ物を作って味わうも良し、楽しみ方は色々。お好みの作品&味が見つかりますように。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 本にまつわる本
感想投稿日 : 2020年6月17日
読了日 : 2020年6月17日
本棚登録日 : 2020年6月17日

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コメント 2件

goya626さんのコメント
2020/06/18

ううむ、食指がうごきますねえ。小山哲郎さんは、白川静さん関係の漢字の本も出していますね。

nejidonさんのコメント
2020/06/18

goya626さん、こんにちは(^^♪
面白そうでしょう?ええ、面白いのです・笑
他の方のレビューも読みましたが、皆さん気になるところが違っていました。
私はばななさん一家にターゲットを当てましたが、goya626さんはどうなるのでしょう。
それを知りたいです。
ぜひぜひどうぞ!

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