ずどんといっぱつ: すていぬシンプだいかつやく

  • 童話館出版 (1995年3月1日発売)
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本棚登録 : 242
感想 : 20
5

デビュー作の流れを濃厚にくんだ作品。
お話会では読むたび大人気で、結末まで読むと「良かったねぇ!」という声があがり、3年生の男子たちに拍手喝采をもらったことも。
とかく文字から理解しようとする大人は枝葉末節にこだわってしまうが、子どもたちはちゃんとお話の真意をくみ取ってくれる。
勝手な思い込みで子どもの世界を狭めていないか、毎度反省させられるお話だ。
とは言え、この冒頭には衝撃を受けるのだけどね。

「シンプは だれがみたって みにくいめすの こいぬです。」これが最初の一行目。
そして飼い主はあろうことか、貰い手のないシンプをゴミ捨て場に捨ててしまう。
動物愛護協会から猛クレームがつきそうなスタートだが、シンプの苦難はこの先も続く。
飢えと疲労でたどり着いたのは、サーカスのピエロの小屋。
それからはシンプの大活躍で、スポットライトと高鳴るドラムの音で「ずどんといっぱつ」の炸裂だ。

人間に裏切られたシンプが、人間の窮地を救い、人間とともに幸せになっていく。
後半部分の知恵と勇気にあふれたシンプの姿には、手をぎゅっと握りしめて応援する子どもたちの熱量まで伝わってくる。
濃い色彩で描かれたサーカスの情景描写がとても素敵で、団長さんたちと食事する場面では「あ、ボルカと似てる!」と叫ぶ子もいたりするので、読み手は気が抜けない・笑
そしてラストの一行と最初の一行との落差に、こちらも心からほっとする。

タイトルの意味が気になるところだが、原題は「CANNONBALL SIMP」で、これでは何となく想像がついてしまう。だからやはり「ずどんといっぱつ」で良いのだろう。
意味を知りたい方は、読んでからのお楽しみ!(^^)!
中学年から。約12分。
持たざる者も等しく幸せになるようにという、バーニンガムの願いが込められている。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: ジョン・バーニンガム
感想投稿日 : 2019年8月3日
読了日 : 2019年8月3日
本棚登録日 : 2019年8月3日

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