ねこのオーランドー農場をかう

  • 童話館出版 (1996年11月1日発売)
4.03
  • (14)
  • (13)
  • (13)
  • (0)
  • (0)
本棚登録 : 226
感想 : 16
5

片手で持って読み聞かせするには不似合いな、大きなサイズの絵本である。
縦36センチ、横は26センチもある。
大型絵本のように台に置いて読めば良いかというと、文字数が多すぎてそれも難しそうだ。
でも内容がとても深くてあたたかく、挿絵も明るくて綺麗で、ここはぜひおうちの中で、お子たちに読んで欲しいところ。
石版画で描かれた絵は、迫力もさることながら、各ページを隅々まで観る楽しみがある。
英国生まれの「ねこのオーランドー」シリーズは、第一作目が1938年の出版。
この「農場をかう」が一番好きと言う人が多く、私もそのひとりだ。
読むたびに新しい発見があり、「いい大人」になった今でも教えられるところが多い。もちろん、教訓なんて垂れてはいないが。

子どもたちの誕生祝いにピクニックにやってきた猫のオーランドー一家。
途中立ち寄った農場は、納屋も馬屋もボロボロで、動物たちは家の中に入り込んでしまっている。
なんとそこを買い取ったのがねこのオーランドー。
お金を送ってくれと、ご主人に電報を打つあたりはぷぷっと吹き出してしまうが、第一作目でねずみ退治に大活躍しているオーランドーは、すでに家族同様なのである。
さて、面白いのはこれからで、オーランドーは知恵を絞って(それもとても猫らしいアイディアで)動物たちをあるべきところへ行かせるのだ。
仔猫たちの働きぶりも素晴らしいし、何よりそれをおおらかに楽しんでいる。
地道な作業に見える農家の仕事もきちんと描かれ、家族で一つの目的に向かって働くことの大切さをユーモアで包みながら語られている。
その姿を観ていると、なんとも言えない安堵感があり、憧れさえ抱いてしまうのだ。
働いたことの成果は品評会で現れるが、それだけで終わらないのも、この作品の良いところ。

一家の主ではあるけれど決して支配的ではなく、農場経営に温かくシフトしていくオーランドーの手腕はさすがであり、奥さんのグレイスも賢くて素敵だ。
全体に色彩は淡くゆったりとした絵で、描きこみすぎず品がある。
何度読んでも楽しめる一冊で、大人にもお薦め。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 猫もの
感想投稿日 : 2013年10月8日
読了日 : 2013年10月7日
本棚登録日 : 2013年10月7日

みんなの感想をみる

コメント 0件

ツイートする