父の縁側、私の書斎 (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社 (2006年8月29日発売)
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感想 : 23
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壇一雄の長女壇ふみが語る家・家族の記憶。

昭和初期から小説家として活躍した壇一雄の娘で俳優・エッセイストである壇ふみが幼少時代からの家と家族の記憶を綴るエッセイです。

 放蕩で放浪癖があり自宅を何度も取り替えた父親への想いと転々とした懐かしい家の思い出をスケッチを交えて綴る知的で柔らかく・優しい言葉は緩やかで精神的な豊かさが感じられます。

 特にこの作品では家(住まい)の思い出が多く綴られているのですが現在では珍しい縁側は家族やご近所にとっての社交の場であり、父の友人である坂口安吾が居候した書斎の描写、一雄の書斎の多さに普段気にもかけない人様のお家の事情に少なからず嫉妬する思いです。

 感覚的な事ですが作中に家の”明るさ”が暑くるしいという場面で私も全く共感し実践している次第です。電燈等で夜中は勿論昼間から煌々と明るいのは何だか暑苦しく落ち着かないのです、柔らかい明かりで多少暗いぐらいの感じが心も身体も休まる気がし作者の繊細な感覚と文章表現に感銘を受けました。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 日本小説・文学
感想投稿日 : 2021年5月2日
読了日 : 2013年1月19日
本棚登録日 : 2013年1月13日

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