小役人である浅井の妻が死ぬ。心臓麻痺で突然死ぬ。しかしその倒れた場所は、浅井が聞いた覚えもない場所であった。
…という発端は、謎としてなんとも魅力的である。
妻が何故そこにいたのか、を追う部分が、前半。分量的にも、全体のなかほど強あたりまで。
そして、とある人物を追い詰めていこうとするのが後半。
しかし、この前半と後半、トーンがまるで違うのだ。
書いている時期に、時間的な断層があるのかと思うほど。
結末に割かれるページは、意外と少ない。
どんどん追い込んでいく割に、最後はあっさり。それも、無垢・善意によって切り返されるのが、ぴりりと小粒なスパイスになっていると言えるかもしれない。
松本清張得意の断崖は出てこないけれど、列車は登場。
なんとも小心な小ものや小役人を描く筆は闊達。
読書状況:読み終わった
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カテゴリ:
ヨミモノ
- 感想投稿日 : 2012年1月6日
- 読了日 : 2012年1月6日
- 本棚登録日 : 2012年1月6日
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